歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2008年07月14日(月) 答えに困る“いつまで歯はもちますか?”

「今回治療した歯はいつまでもちますか?」

この質問は患者さんからしばしば尋ねられる質問の一つです。この質問に対して僕は一貫して下のように答えています。

「そればかりはいつまでもつか、答えられません。」

患者さんからすれば非常に無責任な発現に思われるかもしれませんが、これが僕の本音なのです。患者さんならば、同じ治療費をかけて治療をするなら、一度治療した場所がいつまでも健康に保って欲しいものです。歯医者も同じで、自分が治療した所がいつまでも機能して欲しいと願いたいのです。ところが、これが予測できないのが悲しいところです。

例えば、きちんと治療をしても、治療後の患者さんの管理が悪い場合、定期的な歯磨きをしなかったり、定期検診を受けなかったりした場合などは新たな歯のトラブルが生じることがしばしばです。そうかと思えば、治療後の患者さんが口の中に無頓着だったとしても、結果としていつまでも問題ない場合もあるのです。

多くの歯科研究によれば、普段から真面目に歯を磨き、定期的に、積極的にかかりつけ歯医者に歯の管理に通う人の方がそうでない人よりも圧倒的に歯が健康であり続けることが証明されてはいますが、一度歯を治療した場所に関しては、いつまでもつかは非常に不確定な要素が多すぎ、歯医者が自信をもって答えることができないものなのです。

先日のことです。ある女性患者さんが来院されました。この患者さん、2年前に歯を白くしたいということで来院された患者さんだったのですが、直前に結婚を控えているという状況でした。実際にこの患者さんの歯を見てみると、むし歯はなかったのですが、前歯が全体的に薄い褐色傾向にあったのです。このような場合、時間があれば歯の漂白を考えるのですが、治療に許される時間が余裕がないことは明白でした。そこで、僕が提案したのが、歯のマニキュアでした。歯の表面に白いレジンと呼ばれる材料を塗布するのが歯のマニキュアです。これは女性が手や足のつめに塗るのと同じような感覚で歯に塗布するものですが、通常のマニキュアと同様、長持ちするものではありません。あくまでも2〜3ヶ月程度もつものであり、製品の仕様説明書にもそのことが記載されていました。僕はこの患者さんにそのことを説明し、歯のマニキュアを勧めたところ、トライしたいということを申し出られました。
そこで、歯のマニキュアを塗布したところ、患者さんは非常に満足され、うちの歯科医院を後にされました。

それから、2年後の先日、久しぶりに来院されたのですが、この患者さんの前歯を診て僕は少々驚きました。それは歯のマニキュアが2年前に塗布した状況と全く同じ状況だったからです。患者さんに確認をしても、マニキュアが欠けたり破損したりすることなく今に至っているとのこと。これは予想外でした。あくまでも急場を凌ぐような感覚で行う審美治療の一つが歯のマニキュアだったのですが、2年も問題なく経過するとは予想もしませんでした。僕はこの患者さんに対して、もつところまで歯のマニキュアをそのまま使用することを提案し、患者さんも快諾されました。

誰でも想定外の事態に遭遇する経験はあるものですが、僕にとってもこの歯のマニキュアが2年ももつことは全く想定外でした。患者さんには事前に2〜3ヶ月しかもたないであろうと説明していただけに、歯の治療後の状態がどうなるか全く予想できないことを改めて感じた、歯医者そうさんでした。


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