昨夜、僕は地元歯科医師会の夜の会合があり出席してきたのですが、いつものように会合前に何人かの先生と雑談をしておりました。そこで話題になったのが地元歯科医師会のベテラン先生T先生のことでした。 T先生は齢60歳の先生なのですが、最近、脳梗塞になり入院治療中とのこと。見舞いに行った先生の話によれば、命は助かったものの手足の麻痺が残り、歯科治療を続けることは不可能に近いとのこと。T先生の診療所に通っていた患者さんについては近隣の歯科医の先生にお願いをし、迷惑をかけないように手配しているそうですが・・・。
つくづく、そして、あらためて歯医者稼業も体が資本であることを感じさせられた話だったわけですが、その後、雑談の流れは歯医者の死に場所のことに変わったのです。 興味深かったのは、雑談に参加していた歯医者の先生はほとんどが家の畳の上で死にたいとい言われていたことでした。病院のベッドの上で死ぬよりも、自分が日常生活している家で一生を終えたいという意見が多数だったのです。そのような中、雑談に参加していた先生の一人、Y先生がこのようなことを言われました。
「おれは歯医者バカだから、同じ死ぬなら治療をしながら死にたい!」
周囲からは “そんなことなったら患者さんに多大な迷惑をかけますよ!“ という意見が大勢を占めましたが、Y先生は頑として自分の意見を譲りません。
「歯医者というのは自分の天職だと思うから、自分の仕事場である診療チェアで一生を終えることが私の理想だ。」
かつて、クラシック音楽の某有名な指揮者がオペラ劇場のオーケストラピッドで指揮をしている最中、突然倒れ、鬼籍に入ったというニュースが流れたことがありますが、これなどはまさしく自分の天職である仕事をしている最中に命を落とすという、ある意味壮絶な最期だったといえるでしょう。亡くなった本人にすればどうか?死人に口なしですから亡くなった本人の本当の気持ちは知る由もありませんが、少なくとも死の恐怖に悩まず、悩む間も無かったことは確かでしょう。先生自身もこのような考えのもと、自分の一生を終えたいと強く願っていることが容易に想像できました。
ちなみに、僕は同じ死ぬなら自宅の畳の布団の上で眠るように息を引き取りたい方です。歯医者であることに誇りは持っておりますが、診療中に倒れるということは何だか患者さんに醜態をさらすような気がしてならないのです。死に方に関して誰も好き勝手に選択することは不可能でしょうが、同じ死ぬなら静かに消えるように世の中から姿を消したいですね・・・。
ただし、僕はまだまだ世の中に執着したい性質ですから、今はまだまだ仕事に、家庭に、自分の趣味に打ち込める生活を続けていきたいです。今死んでたまるか!ってところです。
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