昨日は、午前と午後の診療の合間に地元医師会の会館へ出かけてきました。地元医師会主催の市民向け健康講座に地元歯科医師会の上司の一人K先生が講師として講演することになっていたのです。この度の講演会、K先生はパソコンのプレゼンテーションソフトを利用して講演を行うことになっていたのですが、K先生はパソコンに疎く、どうやって使用、操作すればいいのかわかりませんでした。そこで、僕に白羽の矢が立ち、手伝うことになったのです。 当初は単にパソコンやプレゼンテーションソフトの使用法を伝授するだけの予定だったのですが、いつの間にか僕がプレゼンテーションそのものを作ることになってしまったのです。何かと雑用の多い中、かなりこの講座の準備のために時間を作ることには苦労をしましたが、何とか時間をやりくりし、K先生とも何度も打ち合わせを行いながら昨日を迎えたというわけです。
実際の講演は特に大きな失敗やミスもなく、講演終了後、多くの質問も出たことから成功裡に終わったといえるでしょう。今回、僕は完全な裏方として仕事をしてきましたが、K先生が恥をかくことなく、地元歯科医師会代表として立派に講師を務められた姿を見て、内心ほっとしておりました。
講演終了後、僕は車を置いていた駐車場へ行く時のことでした。K先生の講演のことを話しながら歩いていたのですが、僕が車に乗ろうとした時、K先生が突然言い出されたのです。
「そうさん、今回の講演の手伝い、本当に有難う。これは僕の気持ちなので受け取って欲しい。」
K先生が懐から出されたのは封筒でした。見てみると、封筒には地元医師会の名前と会長名と謝礼の文字が書いてありました。封は全く開いておらず、これは講演を行った演者に対する謝礼金であることが直ぐにわかりました。この謝礼金をK先生は僕にそのまま渡すというのです。
「先生、それはいけません。僕は単に先生の仕事を手伝っただけで、いい経験をさせてもらったと思っています。この封筒はあくまでも先生の講演に対するものですから、僕が頂く性質のものではありません。」
K先生は全く引き下がりませんでした。 「今回、講演が滞りなく終わったのもそうさんの協力のおかげだよ。ただ働きさせるというのは僕の美学に反することなんだ。一番仕事をしてくれた人に謝礼を渡すのは当然のことだよ。」
僕はその場では受け取らざるをえませんでした。しばらくしてから、僕は地元歯科医師会の会長に電話でこのことを伝え、謝礼の扱いについてお伺いをたてました。会長の答えは
「K先生の心の底からの気持ちだと思うから、これはお返しするのはかえって失礼。ここは有難くもらうのが一番じゃないですか。」
ということで、僕は予想しなかった給金を得ることができました。確かに僕は仕事の手伝いはしましたが、主役ではありませんでした。そんな僕に自らの謝礼金を全て手渡すとは。
K先生のお気持ちにひたすら感謝、感激した、歯医者そうさんでした。
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