| 2008年07月01日(火) |
もしも、相手の心のうちが全てわかる人が患者ならば・・・ |
以前、誰かのSF小説の主人公設定の一つに他人の心の内が全て瞬時にしてわかるというものがあったように思います。これって非常に興味深い人物設定だと思います。なぜなら、世の中の人は自分と相対している人の気持ちはわからないものですから。もちろん、向き合う人の表情や雰囲気、行動、言動パターン、そして、これまで培ってきた人生経験などからどのようなことを考えているのか推測することは可能でしょうし、推測が当たる確率はかなり高い人もいるでしょう。が、会話を直ぐに理解するが如く、相手の心の内がそっくりそのままわかる能力というのは、おそらくほとんどの人が持っていないものと思います。
もしも、相手の心の内が瞬時にわかる人が僕の患者だあれば、どうでしょう?例えば、親知らずの抜歯が難しく、四苦八苦している時の状況だとします。以下、僕の心の内です。
どうして抜けないのだろう?根っこが大きく膨らんでいるのかな?それとも、根っこが先の方で分かれてしまっているのか?レントゲンではどうも根っこが膨らんでいるように思うのだけど・・・。それであれば、根っこを割るか、骨を削るかだが・・・。根っこの大きさや根っこの位置を考えると骨を削った方がよさそうだ。
そうなると、抜歯後、かなり腫れるなあ。患者さんにはいつもよりも長めに薬を服用してもらうよう処方しておかないといけないし、口だけでなく、紙にも書いて念入りに説明して了解してもらわないと、後でトラブルのもとになる。本当は骨は削りたくないけど、骨を削るしかないか?
必要な器具は器具棚に置いてあったはずだな。○○さん(アシスタントの人の名前)に言って取ってきてもらおう。患者さんはずっと口を開けっぱなしだから、器具を取りに行ってもらっている間は口を閉じて休んでいてもらおう。その時には、患者さんには一言声をかけて、もうしばらく頑張ってもらうように伝えないとなあ。
それにしても、もっと簡単に抜歯できるはずだったのに、予測と実際の抜歯とは違うものだなあ。ああ、何だか肩に力が入っているのがわかるよ。こんなことでは自分が変に緊張していることが患者さんにバレバレだ。ただでさえ抜歯に時間がかかっていることがわかって患者さんは不安がっているはずなのに、俺の肩が力が入っていたら、患者さんに余計に不安を与えてしまう。ああ、どうしたことか?そんなことを思っている間に局面打開だ。○○さんに言わなきゃ・・・・。
これは以前、僕が親知らずの抜歯が上手くいかず、感じていたことを言葉にしたものですが、これが抜歯を受けている患者さんにまるわかりになれば、おそらく患者さんは卒倒してしまうかもしれません。実に頼りない歯医者なのか?と思ってしまうことは必定でしょう。
これからどんな患者さんが僕の歯の治療を受けるか想像がつきませんが、望むなら、僕の心の内を生で理解できない患者さんだけを治療したいものです。
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