歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2008年06月25日(水) そんなに治療回数がかかるのですか?

先日、入れ歯を作って欲しいという患者さんが来院しました。何でも今まで使用していた総入れ歯を誤って捨ててしまったそうで、食事をするのも一苦労、見た目も悪く、話にくいとのこと。
実際に口の中を見てみると、歯が一本の無い無歯顎の状態であることは一目瞭然でした。これは少しでも早く入れ歯を作らないと患者さんが困るだろうなあと思ったわけです。僕は早速入れ歯を作ることを提案し、治療計画について話をしました。話を聞いた患者さんは驚いた表情をされました。

「先生、次にこちらへ伺った時には入れ歯はできないのですか?」

患者さんは勘違いされているのではないか?そう思った僕は、入れ歯作りがいくつかの過程がある。各過程を確実にこなして作らないと良い入れ歯を作ることはできない。少なくとも今日来院して次に来院するまでに入れ歯を完成させることは困難であることを説明しました。この患者さんは納得しないような表情をしておりました。

「入れ歯は直ぐにできるものばかりだと思っておりました。」

歯科医院に来院する患者さんの口の中の症状は様々です。軽症の方もいれば重症の場合もあります。例えば、むし歯の治療では、一本だけのむし歯があり、比較的浅い場合、1度の来院だけで治療は完了する場合もあります。しかしながら、むし歯が複数本あり、しかも、むし歯が深く歯髄(神経のことです)にまで達しているようなものであったり、痛みが出てしまっているような場合などは1度の来院だけで治療は完了しません。何度も歯科医院に足を運んでもらい、治療をしないといけません。

僕のこれまでの経験では、1回の来院で治療が終わるようなケースは限られているように思います。患者さん自身はたいしたことがないと思っているようなケースでも、専門家である歯医者からすれば大きな問題であり、早期治療をしないといけないような場合もあるのです。時には病院の歯科口腔外科などへ紹介し、手術をしないと治らないケースさえあるのです。

治療に何回の来院を要するか?これは患者さんにとって大きな問題だろうと思います。何かと忙しい日常生活の中から時間をやりくりし、来院するわけですから少しでも早く治療が終わって欲しいことを願う気持ちはわからないではありません。しかしながら、口の中の症状に関する患者さん自身の認識と専門家としての歯医者が診断する結果とは異なる場合が多いのが現状です。軽症で1度の来院だけで治療が完了する場合もあるかもしれませんが、実際の口の中は患者さんが想像するよりも症状が進んでいる場合が多いように思います。

歯の治療は複数回かかると思ってもらった方がいいかもしれません。複数回かかりながらも悪い場所を徹底的に治療し、自己管理できるようにしてもらった方が、長い目で見て歯の健康維持につながる。そのように割り切ってもらった方がいいように思います。


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