My life as a cat
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2022年03月08日(火) チーメディラーパのオレキエッテの思い出

久々に国境を超えてイタリアへ行った。スーパーとは違って旬のものしか売らないマルカートでは、春がすぐそこまでやってきてることを実感することができる。ちょっと黄色の花が開きかかった菜の花の一種であるチーメディラーパは、故郷の千葉の春を思い起こさせる大好きな野菜。カルチョーフィもうず高く積まれてる。これ、イタリア人にとっては日本人でいう筍という位置づけなのではないのだろうか。これが出回ったら春を愛でながら食すというような。青果やチーズを買い込んで、ついでにこれもある意味旬というのか、クリスマスの残骸のパネトーネも買ってしまった。何ヶ月もカビないパンって怖いよねぇ、と言いつつも美味しいから安くなってるとついつい買ってしまう。買い物が済んだらランチ。まだ日差しが柔らかく温かいテラスで、カルチョーフィのパスタを頂いた。卵入りのもっちりした生パスタに炒めたカルチョーフィのスライスが乗って、オリーブオイルとパルミジャーノがたっぷりかかってる。シンプルでいてとっても美味しかった。今度家で作ってみよう。

さて今日のランチはイタリアで買ってきたチーメディラーパとオレキエッテのパスタを作った。これ南イタリアの定番料理で、我が家では冬の間よく食卓に乗るのだが、オレキエッテを打ってる時、チーメディラーパの掃除をしている時必ず思い出すこと。まだロクちゃんがわたしのお腹にいて、もう臨月になろうかという時のこと。夕方に突然トイレで結構大量の鮮血を見た。病院の緊急連絡先に電話したがあまり真剣にとりあってもらえす、結局わたしは出血しただけで、それ以外無症状で、お腹の子ももぞもぞいつものように動いているので、朝を待って病院に行くことにした。青ざめた顔で帰宅したリュカは、夕飯も喉を通らなかった。わたしももちろん不安ではあったけど、こういう時お腹の子の動向を直に感じることのできる女は強いものだ。どこかでこの元気な子が弱ってしまうわけはないと思ってた。翌朝、電車に飛び乗って、病院に向かった。ランチをとる時間もなかったので、電車の中で食べようと、大量に作って冷蔵庫に入れてあったチーメディラーパのオレキエッテを持参した。それを少し食べてリュカがしみじみとこう言ったのだった。

「あぁ、美味しい」

耳を疑った。だって彼はチーメディラーパは苦いといって、積極的に食べたことはなかったのだ。前夜は何も喉を通らなかったので、一晩してまだお腹の子がいつも通り動いているというわたしの言葉に少し安心してやっとお腹が空いてきたのだろう。

病院で数時間に渡って検査を受けた結果、お腹の子は無事だった。出血原因も結局不明だった。ひとつ思い当たることは、出血前にちょっとハードなエクササイズをしたことくらい。体内の血液がかなり増えてる時期なので、体内のどこかで出血したのだろう。もう血を見るのが怖くて、その夜から軽いヨガだけに変えた。

あれから1年半経った今、お腹から無事に出てきた子が、わたし達の間に座って、チーメディラーパのオレキエッテを頬張ってる。このパスタを作るたびに夫婦でお腹の中のロクちゃんに一喜一憂してた妊婦の日々をなつかしく思い出す。

3月になって急に日本の水際対策の措置が大幅にゆるくなった。帰ろう、母国に。だってもう5年帰ってないし、ロクちゃんを両親に見せたいし、何より両親にも会いたい。

「ランドセル買ってくれるよね?」

なんて半分冗談で言ったら、母が

「そこまで生きてるのかわかんない」

などと言う。コロナが落ち着いたところで今度はあらたな戦争の勃発。今だ、今会わなきゃと勢いよく航空券を予約したまではよかったが、ロクちゃんのパスポートがこりゃ大変だ。夫婦で奔走中である。


Michelina |MAIL