My life as a cat
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2021年12月01日(水) べべちゃんの朝食

ロクちゃんの朝食風景を眺めながらしみじみ感じる。あぁ、ここはフランス、彼はニース産まれのフランス人なのね。彼が右手にぎゅっと握りしめてくちゃくちゃと噛んでいるのは胡桃入りのバゲット。たまにわたしが口に運んであげるのは、日曜のマルシェで買うフレッシュチーズ。近所のマダムが搾りたての牛乳で手作りしてくる。これを食べたら、パックに詰められてスーパーに並んでるリコッタチーズには戻れない。そしてアジャンのプルーン。日本にいる時から大好物で、少々お高いのを奮発して買ってたけど、こちらに来たらなぜかもっと高かった。でもやっぱり大好き。ロクちゃんも喜んで食べる。こんな朝食を摂ってる日本の赤ちゃんはなかなかいないだろう。リュカは朝食は甘いものを好む。甘くなくてもいいが、少なくとも塩っぽいものはだめ(だから朝から塩鮭とか日本の朝食はキツいらしい)という欧米の典型。よく食べてるのはBIOで売ってる彼曰く"新聞の味"のシリアルに古代小麦のミルクをかけたやつ。ロクちゃんは納豆ご飯でも焼きおにぎりでもクロワッサンでもパンケーキでも何でも喜んで食べる簡単な子だ。

夕飯。ポルトガルのグラタンがオーブンから湯気を立てて出てくる頃、白い息を吐きながらリュカが早足で帰ってくる。こんな夜はこの熱々のオーブン料理は確かに美味い。ロクちゃんも喜んでがつがつ食べてる。

「こんな美味しいもの沢山食べてるべべちゃんは、フランスにはそういないと思う」

などと褒めてくれる。確かに料理の腕云々ではなく、こんな全て自家製の食事を摂れる家族がどれだけいるだろうか。最近思うのだ。"労働すること"のポイントは、自立しているという自信を持っていられることであって、金銭的なことは大して得がない。共働きの家庭がより良い暮らしぶりをしているかといったら、全くそうではない。二人分の給料で毎食家族でレストランでフルコースのバランスがとれた食事を出来るという人はまずいない。共働き家庭の典型は、仕事に行くためにまずは車が2台必要になる。そして子供を預けてるヌヌーへの支払い。朝は昨日の残りのバゲットにコンフィチュールを塗ったもの、ランチはブーランジェリーでサンドイッチを買う。アペロにワインを一杯と瓶詰めのオリーブや袋詰めのグリッシーニを開け、夜は洗われてから袋に詰められたグリーンサラダと冷凍ピッツァをオーブンに突っ込むか、またはピッツェリアで買ってくるか。スーパーで小さな子どもの手をひいて、ハムとチーズと冷凍ピッツァとコークとビアと・・・というのを見ては、溜息が出てしまう。よく働いたら働いただけ美味しいものにありつくわけではないというのは皮肉なことだ。

夕食後に観てる"American Crime Story"。3rdシーズンはモニカ・ルインスキのスキャンダル。同年代で、彼女が渦中の人だった時など、わたしだって自分の人生の渦中で、こんな遠くの国のスキャンダルより自分の身の回りのことのほうがよっぽど興味深かったのだから、殆ど記憶にない出来事。よく知らないから"モニカ・ルインスキ?あぁ、なんか大統領をハメた人?"という悪女なイメージくらいしかなかった。一度TED.talkで彼女のスピーチを聞いたが、一目で頭がキレるとわかるようなとても明瞭な良いスピーチだった。で、ドラマを観たら彼女は悪女なんかじゃなくて真逆だった。全く計算とかできないただの感情に任せた若い女の子だったんだ。ビル・クリントンはアホなのかずる賢いのかわからないが、リュカと話し合ったところ結局"下半身が脳からの司令を守らず暴れてしまう人"というところに落ち着く。しかし、ドラマを見る限りアメリカという国は狡猾に生きないと踏み潰されてしまいそうでなんだか恐い。実際に住んでみれば、外からは見ることができないもっと良い面が沢山見つけられるのかもしれないが。


Michelina |MAIL