My life as a cat
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2018年11月20日(火) フランス的褒め方

静かな午後。中庭で日向ぼっこをしていると隣人のドミニクが午後の仕事へでかけようと出てきた。隣に並んで数分世間話をする。あっ、ふと彼が声をあげた。

「今日初めて君の横顔を見た。鼻と顎のラインがすごい綺麗!」

このあたりの人は本当に面白いところに目をつけて褒め言葉をかけてくれる。

リュカはわたしがケラケラと笑っていると、

「あっ、そのえくぼが好きなの」

とよく言う。

ある日、知り合ったばかりの人にカフェに誘われて着いていったら、いきなり旦那さんの家庭内暴力の話など打ち明けられて面食らった。という話をクリスティーヌにしたところ、

「あなたの優しそうな笑顔を見るとつい安心してあれこれ話してしまうのよ」

と思わぬところで褒められた。

リュカははじめて会った時からひとめぼれといった雰囲気で猛アプローチしてきた。こんな何の変哲もない至って普通の容姿のわたしの何がそんなに気にいったのか不思議で聞いてみた。

「髪がよかったの。真っ黒で、真っすぐで、たっぷりあって、丈夫そうですごく綺麗だと思った」

そこ?と呆れていると、

「それで話してみたらインディペンデントで逞しいのに可愛らしくて、半分日本人で半分ヨーロピアンって雰囲気が好きだった」

あぁよかった、良いのは髪だけじゃなくて。はじめてこれを聞いた時には驚いたが、こちらに来てからあまりにも髪のことをよく褒められるので納得した。髪が細くて薄くてうねっていてぺしゃんこになってしまう人々にはこの逞しい髪が羨ましいらしい。日本でこの分厚い髪は褒めれらたことはないし、行きつけの美容院でも必ず"梳きましょうね"って言われたのにな。

奇妙な褒め言葉の天才のドミニクの髪は頼りなくふわふわで栗色。会うたびに髪が良いと褒めてくれる。

「君の髪のボトムの揃った切り口が好き」

とよく理解できないところまで褒めてくれる。

しかしこうなるとわたしも褒め言葉には気を使う。あなたは綺麗とか格好良いなんかではあまりにも浅くて軽い感じに聞こえはしないかと。

「わたしフランスって本当あれこれ馴染めないわ。カリフォルニアでは良いものはただひたすら"Great"ってシンプルに賞賛するのに、フランス人ときたら"C'est pas mal(悪くない)"なんて言っちゃってさっ」

と友人が嘆いていた。ここでは曲者っぽいほうが面白いという雰囲気はすごくある。だから"Great"なんて表現は繊細さに欠けるし、直接的過ぎてつまらないと思うのかもしれない。わたしも今度相手をじっくり観察した上でフランス人らしく褒めてみようと思う。


Michelina |MAIL