My life as a cat
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2018年11月15日(木) 温かい手

リュカと待ち合わせて友人のレストランでランチを摂った後、仕事に戻るリュカに着いて病院まで行った。

「いつも君のことを訊ねてきて、いつか会うのを楽しみにしている患者さんがいるんだ。いつかちょっと顔を見せてあげてよ。喜ぶと思うな」

そう聞いていた。それならことのついでに、と軽い気持ちで向かったのだった。病室は2階。その階にいるということは一時的入院ではなくて、もう家に帰れそうにないということを意味するらしい。そう説明されて少し胸が落ち着かなくなった。廊下で車椅子に座って奇声をあげている老女がいる。

「ねぇ、誰か助けて!手も足も動かないの!!!」

慣れっこだし、それ以上してあげられることもないのだろう、職員はみんな無視して自分の仕事をしている。手足が動かずそのうち精神まで蝕まれてしまったのだろう。

病室に着く。半分ドアが開いていて、中はブラインドを閉めていて薄暗い。眠っているのかとそっと覗くと、窓辺でぼんやりと座っていた。ノックして中に入る。小さな小さな老女だった。全部きれいに真っ白な髪はきれいにショートカットにしていて、ラヴェンダー色のセーターを着ている。誰かしら?ときょとんとわたしを見ていたが、自己紹介するとぱっと顔つきが明るくなった。ビズをするとわたしの手をぎゅっと握りしめる。外から来たわたしの手は冷たくて、彼女の手は今にもこてっと折れてしまいそうな弱々しい体つきとうらはらに驚くほど力強い熱がこもっていて温かかった。ずっとわたしの手を握りしめたまま、話している。なんて真っ黒でコシの強い綺麗な髪なのかしら、あなたは本当に綺麗ね、あなた達は本当に素敵なカップルよ、うちにも猫が5匹いるのよ、うちはすごく大きくてね、レモンの木、オレンジの木、オリーブの木があってね・・・帰りたいな、買い物にも行きたいな、でもちょっと歩くともう体中が痛くて・・・あなたは本当に綺麗ね、とわたしの髪を撫でながら泣き出してしまった。彼女は精神までは蝕まれていないだけに、余計思考のままに動かせない体に憤りを感じているのだろう。

リュカも仕事があるので10分くらいで引き上げた。自分もいつかあぁなるのだろうか、とどんよりした気持ち半分、それでもあそこへいたら自分からは会いには行けないから、誰かが会いにきてくれることが本当に嬉しいのだろう、少しだけ良いことをしたと、良い気持ち半分で家へ帰った。

午後、なんとなく何も手に付かなくなって、空いた時間にちょこちょこと練習していたおりがみの薔薇を折った。最初はちょっと難しかったけど、3個くらい折ったらコツが掴めてきた。この一本は彼女に持って行こう。


Michelina |MAIL