My life as a cat
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2016年08月01日(月) Airport Roller coaster

なんとかちゃんと起きられたものの、身支度を終えたらもうタクシーで行く以外に選択のない時間になっていた。レセプションで頼んで前のロータリーへ出た。前の通りをブンブンとすごい勢いで走ってる車のうちの一台なのだろうと思うと見の毛がよだつ。ただ幸いなことに空港に繋がるHWYは朝早すぎることもあって、殆ど車がなかった。わずか3分でタクシーが到着。

″Buon giorno"

と現れたドライバーはさっさと荷物をブートに押し込むと後部座席でシートベルトをまさぐっているわたしにおかまいなく出発した。タクシーはみるみると加速していく。ブリッジを昇りそのまま宙に飛んでしまうのではないかというくらいスピードをだしている。生きた心地がしない。後部座席で凍り付いていると車が止まった。普通に運転したら5分くらいのところをわずか1分くらいで到着したのだった。エアポート・シャトルならぬエアポート・ローラー・コースターであった。

″€16″

1分で? えらい高いな、タクシー。早朝だしこんななのか。首を傾げながら支払った(後で調べたところによると、ジェノヴァ辺りはこんなものらしい)。

エール・フランスのチェックイン・カウンターにはそこそこ人が並んでいたが、さばく人が2人しかいない。そのうち向こうから起きたばかりの髪に寝癖がついている職員が目をこすりながら歩いてきて、乱れたシャツの襟を整えながらチェックイン・カウンターで対応しはじめた。職員が寝坊して電車が走らないとか、そういうことが普通に起こるところだからこういう光景も普通なのかもしれない。

「だって人間だもの」

相田みつをの世界だね。

また通路側をリクエストするとパリまでは変更してくれたが、パリと成田間は往路と同じように€30支払えばできると言われ諦めた。この得体の知れない€30支払う人いるのだろうか。

パリまで2時間ほどで到着。成田行きの飛行機に乗り換えた。一番背後の席で隣には誰もいなかった。と、離陸直前になって額に大汗をかいたフランス人の男の子が現れた。彼がラゲッジを収納し、ひとだんらくしたところで交渉してみた。

「トイレが近くて迷惑かけてしまうかもしれないのだけど、もし気にしなかったら席交換してもらえない」

「いいよ。でも僕がトイレ行くとき迷惑かけるよ」

「それは全然かまわないの。自分がやるのが嫌なの」

「典型的な日本人なんだね(笑)」

こうして復路も通路側に座ることができた。

彼はオーストラリアにしばらく住んでいたというのと、美味しい物と映画が大好きという共通点があり、そして何より英語が不自由なく話せるのでとても話が弾んでしまった。

エール・フランスはストに入っていた。アテンダントはひとりしか見当たらない。ヴェジタリアン・ミールをリクエストしたのに、ランチにチキンが運ばれてきた。ストで人が足りないのでチキンで我慢してほしいという。隣の男の子もヴェジタリアン・ミールをリクエストしたらしかった。ゆるいヴェジタリアンなのだという。このところ出会う食に興味を持つ若い世代のフランス人にはこんな人が多い。煙草をふかし、フォアグラ崇拝、ジビエ大好物なんてオールド・ファッションなのかもしれない、などとそんなことを思った。彼はワイン関係の仕事をしているらしくとても酒に詳しかった。彼が薦めてくれなかったら知らなかったマスネ社がエール・フランスに特別卸している洋梨のブランデーを飲んだ。香り高くてすごく美味しい。よく洋梨や林檎が丸ごとボトルに封じ込められたお酒を見るが、これは果物が小さい時にボトルを被せてしまい、その中で育てるのだそうだ。だから木にボトルが沢山ぶらさがっているような格好になる。彼が飲んでいるコニャックも味見させてもらった。メロンを半分に割って、種を取り出し、そこにコニャックを注いで食べるとすごく美味しいのだそうだ。聞いただけで美味そうだ。彼には色んな″美味しいアイディア″を教えてもらった。そしてエール・フランスの良いところは良い酒をいっぱい積んでいるところだろう。

すごく楽しいフライトとなり、すっかり彼のことが気に入ってしまったが、何せ既婚者なのだ。成田に到着し、連絡先を交換したが、ケータイの待ち受け画面になっている娘さんの写真を見ながら、あまり連絡は出来ないだろうと悟り、楽しかった旅の思い出にしておこうと大事に心にしまって蓋をした。


Michelina |MAIL