My life as a cat
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2016年07月29日(金) ボーノ!ボーノ! Sestri Levante

予約しいたイタリアの鉄道会社がつい昨日までストに入っていたが、今日になって動き出した。よかったぁ、面倒なことにならなくて。朝8時、Thelloにてニース(Nice)を出発。予約時に一等車両がタイム・セールで二等より安くなっていたのでそちらを取ったのだが、大した違いを感じない。ニース(Nice)からセストリ・レバンテ(Sestri Levante)まではネットでの事前予約で€26程。車内は空席ばかりで快適だった。友人が買って持たせてくれたエクレアとコーヒーを広げた。チョコレート・クリームが挟まっていて、更にトップがチョコレートでコーティングされている。濃厚で美味しい。フランスはこういうのがいいんだよな〜、などと満足気に呟いている間にも電車はモナコ(Monaco)を通過し、トンネルをくぐると″Welcome to Italy"というような看板が車窓から見えた。つい先程まで″Tabac"だった煙草のスタンドの表記は″Tabacchi"となっている。やっぱり母音で終わるんだなぁ、イタリアは、などと妙な感動をした。電車はひたすらリグリア(Liguria)の海沿いを走る。サンレモ(Sanremo)を超え、インペリア(Imperia)を超える。イタリア在住のジャーナリスト内田洋子さんが書いていた通り、国境を境にフランス側とイタリア側では様子が一変する。セレブの避暑地のような華やかさのあるフランス側に対して、イタリア側は庶民的な雰囲気で、粗削りな岩がゴツゴツとしていた海岸は序々に優しい砂浜に変わっていく。

3時間ほどでジェノヴァ(Genova)に入る。Genova piazza principeという駅での乗り換えに5分しかないのを心配していたのだが、ここに到着する時点ですでに遅れていたので諦めた。ダメ元でThelloの中で切符をチェックしにきた係員に聞いてみた。乗り換えの電車のチケット(時刻と電車のナンバーが書かれていてバーコードが付いているもの)を購入したのに、既に遅れてしまったのだけど窓口でもう一度購入しなければならないのか、と。驚いたことに、この切符でそのまま行けばいいと言う。本当かなぁ。後で罰金課せられたりしないかな。

Genova piazza pricipeの駅は大きくて、電車が定刻に到着していたとしても5分では乗り換えできそうになかった。モニターで全ての電車のステイタスが確認できる。全部″Delay"だってさっ。そもそもわたしにはイタリアの電車に″定刻″というものがあって、それに対する″遅延″などという概念があることが感動的だった。イタリアという国を疑い過ぎていたのかもしれない。小便臭いプラットホームで待つこと15分。セストリ・レバンテ(Sestri Levante)行の電車がやってきた。また電車は黙々と海沿いを走る。電車には各車両にトイレがあって快適だ。切符をチェックする係員がやってきた。少しドキドキとしながら、明らかに違う時刻と違う電車のナンバーが書かれた切符を差し出す。係員はなぜか機械でバーコードを読み取らず、紙に何かメモして″Grazie!"とにこりと笑って去っていった。不思議だなぁ。電車が全部遅延するようなところだから、その都度チケットを買い直させていたら客から苦情殺到するから、とかそんな理由なのだろうか。

1時間半かけて電車はようやくセストリ・レバンテ(Sestri Levante)に到着した。観光客が押し寄せるような人気もないが、閑古鳥が鳴いているわけではない。静かで程よい賑わいがあった。駅を降りると、通りの向こうに海が見える。

宿に荷をおろしたら、まずはランチを食べようと外に出た。村上春樹がイタリアでの暮らしを綴ったエッセイにこんなことを書いていた。

「近郊の国に旅行に出て、イタリアに戻ってきて行きつけの町のなんの変哲もない安い食堂でパスタを食べるとホッとする。やっぱりパスタはイタリアで食べるに限る。それくらい美味しいのだ」

これを読んでイタリアに着いたらまずパスタと決めていた。

目に入ったお店に入ってパスタがあるかと聞いてみた。

「出してもいいけど、レンジで温めたやつしか出せないよ。うちはバーでレストランじゃないから。美味しいのが食べたければ、ここに行きなさい」

と教えてくれたお店に入った。ランチタイムをとっくに過ぎているのに、満席だ。イタリア語ばかり聞こえてくるが、英語のメニューがあって、英語を話せる可愛くて優しいおねえさんがいる。厨房では″マンマ″以外の呼び方が思いつかないくらいてっぷりとした女性がひとりで黙々と料理をしている。

すごく迷った挙句、″イカと海老のホームメイドの黒いラビオリ″を頼んだ。黙っていても水道の水(イタリアでは有料の水が一般的なので珍しい)をカラフに入れ、フォカッチャをバスケットにごっそり入れて、オリーブオイルをボトルごと持ってきてくれる気前の良い店だ。フランスでもそうだけど、なんにでも″当たり前″といった顔つきでパンを付けてくれるのはなんだか嬉しい。


パスタがやってきた。美味しそう!ひとくち。ラビオリの中にぷりんと形を残した海老とすり身にして小麦粉を混ぜたフィリングとが入っていた。この黒の生地はイカスミだろう。ガーリックオイルでさっと生トマトとイカに火を通したものとオリーブが乗っている。すごく美味しい。量もちょうど良い。イタリア料理の本にはよくひとりぶんのパスタは80gと書かれているが、これは本場でたいていこうだからなのだろう。イタリア料理のフルコースでプリモ・ピアットに入るパスタ。ここでたらふく食べて満腹になってしまったらそれに続くセコンド・ピアット、チーズ、デザートと美味しく食べられないものね。平均日本人だったらアンティパストとプリモ・ピアットくらいでちょうどよくおなかが満たされるだろう。ヨーロッパの他の国で何度かパスタを食べたことがあるが、美味しくないし、嫌になるほどの量を持ってこられたりした。パスタはイタリアで食べるに限る。村上春樹は正しかった。

食後のエスプレッソもこれまた美味しい。会計は€14なり。大満足で店を出た。


到着するなり美味しい食事にありつけて、大満足で町に繰り出した。ビーチへ続く通りの店は寝静まっていて、海水浴へ出かける人達だけが歩いている。後で知ったがシエスタの時間があるらしく、午後1時くらいに店は一旦閉まり、また4時くらいに開き、夜遅くまで営業する。北イタリアといえども南国なのだね。


開いているパン屋を覗いてみた。ピッツァやフォカッチャが売られている。





波のない地中海。泳いでいたら中学生にナンパされた。仲間が背後で冷やかしている。

「シニョーラ、I can speak English」

水中では年齢不詳だったのだろうな、気の毒で水から上がりにくくなった。夏の海は間違いだらけだね。











可愛いケーキ。見ただけ。


イタリアのジェラートが美味しいという情報は塩野七生のエッセイより。著者の知人のジェラート気狂いのイタリア人男性が言う。

「日本のは、あれはアイス・クリームじゃないですね。シャーベットだ。だいたいスマートにはなりたし、かといってアイス・クリームは食べたし、という女たちを相手にしているもんだから、あぁいう味もそっけもないしろものが出来上がるんです。アイス・クリームに限らず、女の考えで作った料理は、外見がいいだけで終わってしまう。本当に食べることに情熱を感じるのは男だけじゃないかなぁ」

"100% Naturale"と書かれたジェラート屋さんでピスタチオと桃のジェラートを買った。どちらもホンモノの味。本当にもう日本でアイス・クリーム食べられなくなってしまうかも。決してしつこく濃厚なわけではない。なんというのだろう、ミルク味もフレイバーもホンモノの味としか言いようがない。


夕飯はランチと同じ店に戻った。ランチを食べている時に目撃した誕生日ケーキのような分厚いピッツァを食べてみたかったのだ。ローマ風でもナポリ風でもない″この店風″なのだそうだ。グリルした米ナスとモッツァレラ・チーズとリグリア地方名産のペスト(バジル・ペイスト)が乗ったもの。ピッツァというよりパンといった感じだね。あっさりしているので一枚ぺろりと平らげた。そして写真がないのだが、この後デザートに食べた自家製桃のセミフレッドがまたまた最高に美味しかった。桃の果肉がぎっしりと入っていた。


食後に土産物を覗いて歩き、その通りの突き当りのビーチまで来た。昼間の賑わいが嘘のように静まりかえっていた。

Michelina |MAIL