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| 2016年07月26日(火) |
まさに鷲の巣村Èze |
カシ(Cassis)からニース(Nice)へ移動。
朝、カシのホテルをチェックアウトして徒歩5分のバス停まで歩く。バス停のたった50m手前で背後から呼び止められる。
″Excuse me"
振り返ると30代くらいだろうグリーンの目をしたイケメンが黒いバンに乗っている。バス停まで乗せてあげるとオファーされる。しかしバス停はもうすぐそこに見えている。彼の車に荷物を積むほうが時間がかかるし、だいたい知らない男の車に乗るなんて、ナイね。丁重にお断りした。が、しつこく食い下がってくる。なんだか怪しいな。こういうのにうっかり乗ってしまってレイプされてその辺に捨てられたりするような事件になるのだろうな。大荷物で大変な時などは判断力も鈍りやすい。ただの親切な人という可能性もあるけど、真の意味で気が利く人であれば、そんな風に相手の気持ちを脅かすようなことはオファーしないものだろう。
カシのバス停から電車の駅までは€1.1で15分くらいで着く。道中はヴァインヤードがあったりしてちょっとした田舎風景が美しい。電車の時間までけっこうあったのでコーヒーでもと思ったが、駅前に一件だけぽつりとあるカフェは開いていない。フランスの小さな駅にはトイレがない。その代わり、長距離移動する電車にはトイレがある。
カシからトゥーロン(Toulon)まで30分ほど、乗り換えてニース・ヴィル(Nice Ville)というニースの中心駅まで約1時間半かかる。料金はネットでの事前購入で€22ほど。
電車の中で明らかにおかしな老人が自分の横に座れと手招きしている。断って別の席に腰をおろした。しばらくすると老人がトイレに入った。その後に20代くらいのイギリス人の女の子がやってきてトイレが空くのを待っている。トイレが空くと老人が女の子に恩着せがましく詰め寄る。トイレットペーパーがないけど、俺がなんとかしてあげるから、と。女の子がなくても構わないと言うのに、無理矢理他の車両のトイレから調達してきて渡す。受け取って用を足した女の子が出てくると老人が悪びれる様子もなく手の平を出す。
″2 euro! I gave you toilet paper"
わたしだったら、どう返すだろう。
″No, go away"
だろう。しかし、欧米というのは面白いところで、こういう人を相手に人々は小銭を渡すことを当然としているような慈悲深さがある。理屈ではない。面倒だからとか相手が恐いからでもない。道で突然小銭をせがまれれば、ポケットを探りおとなしく渡す友人がけっこういる。理由を聞いても明確な答えを持っている人はいない。わたしは勝手に″キリスト教″の教えに結びつくもので、空気を伝って自然と人々の体に染み込んだ風潮なのではないかと解釈している。
彼女も典型だった。ポケットを探り何もないと一度は断ったが、手を引っ込めない老人に仕方なく自分の席まで戻り小銭を持ってきた。
ニース・ヴィルの駅は出口がひとつなので、そこを出てまっすぐ左手に100mくらい歩くとトラムの停車場がある。トラムに乗って15分ほど、ニース・ヴァーバン(Nice Vauban)まで行く。€1.5なり。ニース・ヴァーバンはバスの停留所駅で各方面へのバスが出ているので目的の停留所を探すのに少し時間を見ておいたほうがいいだろう。わたしの乗るエズ(Èze)行き82番のバス停はトラムの停留所からは見えないちょっと外れたところにあった。1時間に1本ほどしか来ないバスに乗り込み出発。チケットはトラムのものが時間内ならそのまま使うことができる。バスはすぐにニースを一望できる丘を登り詰め、そのうち地中海を右手に見下ろす高台を走り続ける。荷物の多い観光客からは感嘆の声が上がる。30分かからずエズ(Èze)村の入口に到着。バス停のすぐそこの小さな宿に荷をおろした。
こんな切り立った崖の上にあるエズ村。海側から責めてくる敵から身を守るためこんな高台に逃げ込み、目を惑わすため迷路のように作られたそうだ。地震がないからできるんだろうな。日本では考えられないこの見た目。
エズ村の中を歩く。小さな土産もの屋やアートギャラリー、カフェがひしめく。見たところ民家はなさそうだ。
村の頂上は熱帯植物園となっている。ここからの景色がいちばんの絶景だというのでみんな€6支払って入場するらしい。わたしも入ってみた。
ここすごくいい!地中海と熱帯植物と妖精なのか女神なのか植物の間に立つオブジェが溶けあった景色が神秘的で美しい。″自然″と″造られたもの″の調和がこのような魅力的な景観をつくりあげているのだろう。
植物園を住処にしてる野良猫ちゃん。耳が少し切れている。人慣れしていてみんなに撫で撫でされていた。
エズ村の入口でなぜかわたしに一目ぼれして着いてきた野良猫ちゃん。他の人が触ろうとすると逃げるのに、なぜかわたしにだけ心を開いてまとわりついてくる。植物園の耳の切れた子の家族なのだろうな。こちらは痩せこけていて、あちこちにハゲがある。
″一緒に連れてってー!ミャオー!!!″
とずっと着いてきてしまった。泣く泣く振り切ってホテルに帰った。
エズ村の植物園の入口付近のカフェでマッシュルーム・オムレツを食べた。€12くらい。美味しいけれど、フランスのカフェではこんな自宅でも簡単に出来るような料理が多い。気取ったフランス料理にも興味はないけど、ラフでいて、もう少しひねりがあって、自分では出せない味を期待してしまうね。