My life as a cat
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2016年06月28日(火) 所詮人間技なのだから

夕暮れ時の混み合ったスーパーマーケットのレジにて。前にいた中年夫婦が会計時に出したカードをインサートしたらレジがエラーとなってしまった。前例のないエラーだったのだろう、レジの女性は焦る。焦ってあれこれと試してみるが、何度やってもエラー。そのうちに列がどんどん長くなる。焦ったレジ係の手が小刻みに震えている。中年夫婦の女性のほうが呆れ顔で睨んでいる。結局もう一度バスケットの中の物を全部スキャンしなおして、最初からやったらエラーもなく無事会計が済んだ。レジ係は顔を真っ赤にして、汗をかき、依然手を震わせて中年夫婦に詫びた。

「お待たせして申し訳ありませんでした」

次に会計を待っていたわたしにも同じように深々と詫びた。待っていたのは5分ほどだっただろうか。レジがエラーを起こし、並んでる人々を5分待たせただけなのに、まるで取り返しのつかない人生の失敗をしたかのように怯える彼女の様子にすっかり心が苦しくなっていた。″大したことじゃないよ、気になさるな″、彼女より年上だったら声に出して言っただろうが、彼女からすればただの小娘だろうわたしはただ心の中で呟きながら、買った物をバッグに詰めていた。前に先程の中年夫婦とその娘が3人で袋詰めしていて会話が聞こえてきた。

「あんなに待たせといて、何にもないのよ。だいたいカード3枚出したくらいでパニックになっちゃってさぁ。もっと落ち着いて対処すればいいのに、焦っていろんなボタン押しちゃってさぁ・・・・」

女性が娘に話している。娘も同調してちらちらとレジ係を敵のように見やる。

わたしはますます心が苦しくなってしまった。サービス水準が高いと言われる日本だが、その実情はサービスする側が顔で笑いながら水面下で足を必死でパタパタと振ってもがいているのではないか。客の立場では物事がきちんと進んでくれるのはありがたい。でも、だからといってサービスしている人の見ていて苦しくなるほどの尽力が見えたら辛い。このレジ係の女性は、フランスのカルフールのレジにどかんと大きな尻をおろして、嫌々な顔で気怠く商品をスキャンするアフリカ系のおばちゃんと爪の垢を煎じて交換して飲んでみたらいいかもね。なにせおばちゃんは、レジにエラーがでたらレジを罵りながら、そのうち列に並んでる客にヤツ当たりするのだから。

「このレジは動かないわよ。いくら待っても無駄よ。ほらみんな散りなさい!」

みたいなこと言ってるんだろうな。手でシッシッと客を追い払う。客もチッとか舌打ちして散っていく。でもこれでいいんじゃないかな。所詮は人間のやることなのだから。何でもきちんとやりこなしたいという日本人の生きる姿勢の高さは素晴らしいけれど、逆にきちんとやりこなせなかったらずたずたにコケてしまうみたいなのも日本人の悪い特徴だと思う。100パーセント目指して、80パーセントできたら良しとすればいいじゃない。頑張ってできることと無理なことをきちんと選り分けていかなければ、精神的に滅入ってしまうでしょう。

客は文句を言う。わたしだって文句を言う。文句を言われるほうには、自分に非があれば心から詫び、機械のエラーとか自分の領域ではどうにもできないことに文句を言われたら口で詫びて、心の中で舌を出してるくらい逞しくあってほしい。


Michelina |MAIL