My life as a cat
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2016年04月22日(金) ″東洋のヴェネツィア″へ

少し古い情報では上海からバスで1時間半と書かれている蘇州は、今は新幹線が通ってたったの30分で行ける。価格も往復で50元(1000円)程ととても安い。

空港のごとく大きな上海虹口の駅の窓口で切符を求め行列に並ぶ。自動販売機もあるが、外国人はパスポートの提示が必要になるので使えない。窓口のおにいちゃんに何度も舌打ちされながらやっとのことで切符を手に入れた。

電車は快適だ。中国人は新幹線に乗ったら何かを食べるものと決まっているのか、みんな遠足のごとく色んな食べ物を広げている。日本人もそれは同じだが、なんたって食べ物のチョイスが面白い。キュウリ、ヌードル、ザーサイ。。。。

隣に座っていた身なりのきちんとした青年が話しかけてきた。上海で働き、週末に自宅のある蘇州に戻るのだとか、2児の父親なのだとか。目的の拙政園は通り道だからとタクシーで送りましょうとオファーしてくれた。

テレビのドキュメンタリーで見た蘇州はいかにも歴史的景観と庭園だけが名物の静かな町のように見えたが、全くそんなふうではなかった。巨大な駅の周りには高層マンションが立ち並び、駅前は交通渋滞していた。

拙政園の前で青年はわざわざタクシーを降りて、チケットを買い終わるまで待っていてくれた。チケット売り場も少し人が並んでいたが、混んでいるわけではなく、窓口のおねえちゃんがケータイでチャットに夢中になっているだけだった。ケータイに釘付けになり、こちらをチラ見して、いやいやチケットと釣銭を投げてよこした。こんな時、日本人でよかった、と実感する。ホスピタリティ精神の希薄さに腹を立てることはないが、自分はこうはなりたくないと思う。大方の日本人のように人を喜ばせることを我が喜びとする自分でよかったとつくづく思うのだった。

拙政園はそれなりによかったが入場に90元(1800円)も取る。そこまでの価値を見出せず高すぎると思った。

拙政園をでて山塘街を目指して歩く。ちゃんとした地図を入手しなかったせいで、距離が測れず、思ったより遥かに遠いことに気付いた時にはすでに1時間近く歩いていた。小さな路地をくねくねと歩き続けた。でもこの小さな路地にこそ人々の本当に暮らしがあった。とても悲しいが見たままを書けば、生きた動物が食料マーケットに並んでいたりした。そういう事情とは裏腹に毛足の長い洋犬をペットとして連れ歩いている人をけっこう見かけた。その一方ゴミを漁るやせこけた野良犬は短毛の雑種ばかりだ。

1時間半ほど歩いて山塘街へ着いた。″東洋のヴェネツィア″とはこのあたりの運河の景観をさしてそう呼ばれるのだろう。しかし、ここも町全体がどことなく観光客かぶれした感じで、少々興醒めだった。

駅まで歩いて帰る気力はなく、地下鉄が通っているということも忘れ、少々高いお金を払いシクロに乗った。わたしより線の細いおにいさんが必死でペダルを漕ぐのを見て心配になったが、運河から吹く初夏の夜風がひんやり肩に当たり、気持ち良かった。

上海へ戻る新幹線の中、隣に幼稚園生くらいの女の子がひとりで座っていた。小鳥のようにひたすらひまわりの種を啄んでいる。英語で話しかけると、意味は解るようだが、話せはしないようで中国語で返してくる。こちらもなんとなく理解する。お互い好き勝手な言葉を発して空気で理解しあう。ジム・ジャームッシュの映画のようで愉快だった。






拙政園。












これは全て機織り。






作業台。









庶民の暮らす地区。小さな商店がひしめいている。



外の喧騒を眺める姉妹。



山塘街の入口はこんな大仰な門がある。









巨大な蘇州駅。



そして駅前の巨大な像。



水際で夕涼みをする人々。

Michelina |MAIL