My life as a cat
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2016年04月03日(日) 桜の下で国際交流





















転職活動で以前働いていた会社を訪れた。10年以上ぶりだ。必要以上に胸騒ぎがしているのは面接のせいはなく、付き合ってるとも言えない友達以上恋人未満のような関係だった人とばったり再会したりするのではないかという淡い期待を抱いているからだ。女の典型でとことん向き合って別れた男の人には執着心がないが、曖昧な関係だった相手ほど懐かしく思い出してしまってふと会ってみたくなったりする。面接は同敷地内にあるだけで、全く別の会社だとジョブエージェンシーは話していたのだが、面接官のひとりが微かに記憶の片隅にある人だった。相手も同じのようだ。以前働いていた会社から数名が流れてきたと聞いて、内定ももらってないのに、もしかしてその中に彼がいるのではないかとまた期待してしまう。

面接はさんざんだった。人格が出てしまうような質問をぶつけられ回答に屈した。″模範的な回答″を用意していなかったせいで、日頃考えている″模範的でない″本音がでてしまったりした。

帰り道、すっかり落ち込んだ。昔の男友達との再会もなく、面接もうまくいかなかった。そして何よりわたしの心を曇らせたのは面接官の他愛ない質問だ。

「失礼ですが、結婚されていますか。お子さんは。」

居酒屋で聞かれたら特に気にもかけず答えただろう。でも就職の面接で聞かれるのだ。別の面接官が慌てて付け足した。

「いえ、スタートアップに携わってもらうので、軌道に乗るまでは突然長期休暇などを取られると困るもので」

わたしが男であったら同じ質問をされただろうか。彼らの統計上女は家族がいたら家族のことであれこれと休暇を取る傾向にあるのだろう。そしてその統計は間違っていない。しかし、それはあくまで統計で、中には男が育児休暇を取得する家庭だってある。この質問は未婚だといえば、どこか変わっているのではないかと、既婚だといえば、休暇をいっぱい取るのではないかという勘繰られる、もう女という性でどのみち不利な匂いのするものに思えた。″女性の社会進出″なんて掲げても、やっぱりどこか男の女の間には社会における違う役割があるのだろう。わたしはフェミニストのような精神は持ち合わせていない。日本は先進国の中でも最も女性の社会進出が実現されていない″遅れた″国だと言われるが、女性が家庭に入っていることでうまくいってることも多々あるのではないかと思っている。わたしはただ社会の中で″自立したひとりの人間でいたい″と思うくらいのことで、それは未婚でも既婚でも労働者でも専業主婦でも実現可能だとは思う。期待されていないパーティーにひょっこり顔を出してしまったようなどこかあわれな気持ちになった。

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今年のお花見は国際色豊かな面子が揃った。中でも、珍しく英語が堪能でグローバルなセンスを持ったイタリア人と話せたのはとても面白かった。イタリアという国は興味があるが、本で読んだだけで、なかなか生の声を聞けたことがなかった。

「インドに旅行したいけど、イタリアではインドは危険な国だと言われてるからちょっと怖いんだよね」

という言葉には爆笑してしまった。イタリア人に危険などと恐れられるインドってすごい。

「両国とも良い勝負だと思うけど」

「え!?そうかな。だってインド人って運転とかも超適当でみんな好き勝手な方向に走ってるんだよ」

それもイタリア人といい勝負だけどね。

飲んで、食べて、おなかが落ち着いた頃、彼がバッグから黒い液体の入った極小のボトルを出した。

「なにそれ!?」

「エスプレッソ。食後はこれがないと絶対ダメ」

味見する?と渡してくれたが、一口で飲み干してしまえるような量で、全部飲んだら怒るだろうと気を使った。

日本の典型でもある観賞用の桜の下、食用のサクランボの国の人々との交流は大いに盛り上がり、国境のないジョークの数々に沢山笑った一日だった。

(写真:桜の下で遊ぶおじいちゃんと孫らしいふたりがなんとも可愛いらしかった。子供が子供でいる時間は桜の花と同じくらい儚いものね)


Michelina |MAIL