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通勤途中、会社の裏手の芝生の土手を横切る時にふと鮮やかな色彩が目に入って足を止めた。雉だった。色鮮やかな美しい雉が朝陽に瑞々しく光り輝く芝の上にひょっこりと静止していたのだった。いつか鮮やかな色の羽が落ちているのを見て、この辺りに綺麗な鳥がいるのだろうと思っていたが、ついに姿を現した。神聖な絵画のような光景だった。見惚れて遅刻しそうになった。
帰り道、また同じ所に雉がいた。翌日もその翌日も。野性の動物が人間の前に姿を見せる時。自分が特別選ばれた人間のような気にさせてくれる。写真を撮ろうなんて気を起こすとするりと逃げられたりして思い通りにならない。思い通りにならないから気をもむ。そして気付くと夢中になってる。野性動物にはそういうたまらない魅力がある。会社の門を出て角を曲がるとすぐに雉のいる土手だ。明日は休みだし、今日ここで待っててくれなかったらわたしはどんなに落胆するだろうか。恐る恐る角を曲がった。
いた!
何かを夢中で啄んでいた。嬉しくなってふだんは足を踏み入れない土手の向こう側を見に行った。足元をよく見たらつくしとクローバーでいっぱいだった。春を告げるのは頭上の桜だけじゃない。足元からもむくむくと春が息吹いていた。