My life as a cat
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2016年03月12日(土) Jack

吉川文子さんの″もうひとつ食べたくなる 軽やかな焼き菓子″の本のレシピは、どれも手軽に作れておいしい。朝食にもおやつにもつまみにもなる。週末にいくつか焼いておいて、平日のバタバタしてる朝でも自分が焼いたスコーンを、疲れ切った夜でもワインをちびちびやりながら自分で焼いたクラッカーを食べられるってすごく幸せ。今週はブラックオリーブのクラッカー。ザクザクとした生地に練り込まれているのはアンチョビ、クミンシードとブラックオリーブ。本のタイトルのとおり、止まらなくなっちゃうんだよね。

「ぼくらの家路(原題:Jack")」というドイツ映画を観た。まだ自分が子供みたいに遊びたくて仕方がないシングルマザーに育てられる10歳と6歳の兄弟の物語。もうかわいそうでかわいそうで最初から最後までぼろぼろ涙が止まらなかった。母親は子供を放ったらかして男に狂ってて、お兄ちゃんのジャックが弟のマヌエルの面倒を見ている。ききわけがよく、しっかりしてるジャック。たった10歳なのに″子供でいること″が許されない。でもやっぱり子供なのだ。どんな母親でも一緒にいて甘えたいのだ。この母親というのもかなりの曲者だ。虐待するとか食べ物を与えないとか、そこまでの救いようのない悪い人間というわけではない。子供を放ったらかしてても、一緒にいるときはまずまずのちゃんとした母親らしいことをする。一緒に遊んだり、レトルトでもちゃんと食事を与える。男を連れ込んで″お取込み中″でも子供が空腹だといえば中断してジュースやらパンやらをちゃんと与える。声を荒げて怒ったりすることもなければ、暴力をふるうこともない。男を優先させることを除けば子供にとっては″大好きなママ″ということになるのだ。子供よりも男を優先させる女が良識のあるまともな男と出会える確率は限りなく低い。いつも″今度こそ運命″と思って結局破局してしまうのだろう。それでも切ないのは、彼女だって経済的、精神的に頼れる男性が欲しいといういたって当たり前の人間の心理が読み取れること。片親だけで子供を二人育てるって心身ともにたやすいことではないでしょう。でも結局、男が最優先だから男に軽んじられる。子供を放ったらかして自分と共に過ごす女との将来を考える男もなかなかいないだろうし、いたら頭が弱い。そしてうまくいかなくなるとまた子供を放ったらかして次を探す。そういう負の連鎖から抜け出せない。

気になったのは登場するほとんどの大人たちがまともでないこと。だって自分が警備してる駐車場の車の中で小さな子供が寝てるのを見つけたら第一声は、

「窓を割ったのか!早く降りろ!」

じゃないでしょ、ふつう。

「どうしたの?なんでそこにいるの?」

じゃないのかな。だってどうみても不良なんていう見た目じゃない、どこにでもいる普通の子供達なのだよ。

お母さんを探してるって子供ふたりだけが訪ねてきても、知らん顔してる大人とか。

天使のような無垢な子供がふたり、お母さんを探して走り回り、おなかがすいてカフェで盗んだクリームと砂糖を食べ、路上で寝たりするのが辛くて仕方がなかった。そのラストがハッピーエンディングと呼べるのかどうか、すごく考えてしまったけど、きっとあれが最善の道なのだろう。


Michelina |MAIL