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夕飯にきのこと炒り卵の餃子を作って、「初恋のきた道」を観た。15年も前に映画館で観た時のことをよく覚えている。その時″仲良しだった″(愛を語りあったりするわけでなくただ毎日一緒にいた・・・今思えばお互いすごく好きだった)男の子とあちこち歩き回ってさんざん遊んだ日の夜、渋谷のBUNKAMURAへ辿り着いた。隣の劇場では「花様年華」が上映されていて、不倫か初恋かとあれこれ論議の挙句初恋を選んだのだった。わたし達はもう疲れていたせいなのだろう。映画に感情移入することなくまぁまぁという感想を残しただけだった。
改めて観たらすごく切ない映画で、泣けた。生まれ育った村しか知らず、自分の美貌すら自覚のない18歳の少女(チャン・ツィ)が町からやってきた小学校の教師に恋をする。少女の美しさと裏腹にこの教師の見た目がひたすら良識のある素朴な青年風なのがいい。映画の中の全てがとても清貧で美しい。陶器のお直し屋が村にやってきたり、壊れた機織りを直し直し使ったり、少女のハンテンには継接ぎがしてあったり。暮らしが素朴で雑念がなくて、だから恋も一直線。きのこ餃子を抱えて、町に連れ戻される先生の馬車を懸命に走って追いかけるシーン、一面山吹色の秋の美しい背景も相まって本当に切なかった。この初恋には「母をたずねて三千里」的な壮絶なストーリーはない。少女は先生のいる町まで続くその道を歩きはじめるも途中で倒れて村長に連れ戻される。そういうスケールの小さなところにもこの恋のあまりにもの幼さが映し出されていてよかった。
映画の中のきのこ餃子は具はきのこだけで蒸しあげていたのだが、わたしのは炒り卵入りで焼いてみた。美味しかったけど、きのこだけの水餃子のほうがよほどあの切ないシーンにしっくりくるね。