My life as a cat
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2011年07月23日(土) La Marche de l'empereur

邦題:皇帝ペンギンを観た。氷山ばかりの映像が暑苦しさを和らげてくれる夏休みにぴったりの映画だ。愛らしいだけじゃない、マイナス40℃の壮絶な南極の冬を越えて種の継続を守ろうとする芯の強さを持つ皇帝ペンギンのドキュメンタリー。さすが、フランス映画、ナレーションは事務的ではなく、すっかり酔ってしまうような詩的な言いまわしをする。月と太陽が出会う季節=冬が訪れる季節、夏の間に思いっきり泳いで魚を食べ、栄養を蓄えた彼らは水からあがり、外敵に襲われる心配のない更に寒い南の内陸、オモアック目指して行進を始める。地図は太陽だけ。足の短いよちよち歩きのペンギンが飲まず食わずで来る日も来る日も健気に懸命に歩き続ける。ついにオモアックにつくと"求愛のダンス"が始まる。ここで結婚して子供を産むのだ。オスの生殖能力は一度だけ。メスは一個しか卵を産まない。卵を産むと、体力を消耗したメス達は食料を得るためにまた群れをなして海を目指す。残されたオスは体を寄せ合い、じっと卵を温めて厳しい冬を越えなければならない。親ペンギンはその間にも海で餌食になったり寒さに耐えられなかったりで命を落とす。それは即ちその子供も死ぬことを意味する。メスが胃にエサを蓄えて戻ると今度はオスが海をめざす。こうして交代で子供にエサをあげる。

厳しい自然を生き抜くために彼らが授かったものは羽毛と強さと大きな愛だけ。それでも海に漕ぎ出す彼らの姿といったら生き生きとして希望に溢れている。テレビをつければ脳みそが溶けてしまいそうなくだらないグルメ番組ばかり、ポストはジャンクメールでいっぱい。あの手この手で物を売って、満腹でも食べ続けるように私腹を肥やすための手段を選ばず、そこから脱落すれば自ら命を絶ったりする病的な社会に身を置くわたしには、あまりにも濁りのない眩しすぎる世界で、生き遂げようとする彼らの姿に胸が熱くなり、すっかり心が溶けてしまった。


Michelina |MAIL