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タキを連れて買い物に出かけた。タキは歩くのが大好きだから短い足でわたしと同じスピードをたもってしゃかしゃか歩いてくれた。デパートの入り口でタキをバッグに入れて手に持った。そして化粧品売り場へ。朝も早く他に客がいなかったせいで売り場のおねえさんはつきっきりで懇切丁寧に説明しれくれた。わたしは首にケープを巻かれ、前髪はクリップで止められ、おねえさんにファンデーションを塗られていた。と、構内放送が入る。
「茶色のミニチュアダックスフンドが迷子になっています。お心当たりの方は・・・」
おねえさんと顔を見合わせ、わたしの足元に置いたバッグを持ち上げた。何も入っていない!!インフォメーションカウンターまで走る。そこにはトキが嬉々とした顔で待っていた。わたしはケープもクリップもつけたまま、顔は半分だけファンデーションを塗った格好だった。
沢山歩かせたせいで午後はソファに寝そべっておとなしく一緒に映画を観ていてくれた。平日の朝はわたしが仕事に行くのが辛いのか、ごはんを食べてくれないのだが、今日は美味しそうに全てをがつがつ平らげた。タキは金儲け主義のブリーダーのむやみな繁殖で生み出され、売れ残った命だった。鳴き声がうるさいと声が出ないように喉に手術を施され、劣悪な環境で飼い殺しされていたところを動物愛護団体に保護され、そしてわたしの同僚に引き取られた。それでもこれっぽちも人間を恨むことも疑うこともせず、ひたすら健気に誰かと一緒に過ごせる時間を愉しみに生きている。"タキの心はきれいだね"と満腹で寝そべっているおなかを撫でると気持ちよさそうに身をくねっていた。