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先々週のこと。納期とクオリティの狭間で苦しみながら、黙々と忙しいスケジュールをこなしていたわたしのところへある同僚の女の子がずんずかずんずかと歩み寄ってきて、書類を突き返し言い放った。
「ちゃんとやってよね。」
その瞬間わたしの頭の中は真っ白になった。一言「はい」、と返事をしたが、体中から全てのエネルギーを吸い取られたように脱力した。正当な言い分や言い返したいことは山ほどあったがエンドレスになりそうなのでぐっと飲み込んだ。言葉を飲み込んだらその代わりのように帰り道、涙がぽろぽろ溢れてきた。仕事は難しい。能力以上のことを求められ続けていたが自分なりに頑張ってやってきた。ちゃんとやっていないなどと言われるのは心外だった。
どっぷりと落ち込んだまま週末に入った。ある男性に誘われてドライブへ出かけた。わたしの大好きなコンバーチブルで都心を抜けて、葛西臨海公園へ連れて行ってくれた。木陰に席をとって、寝転んで、たくさんお喋りし、水際を散歩した。日が暮れる頃、一番星や月を見ながらまたドライブして、彼のお気に入りのレストランへ連れて行ってもらうことになった。厚待遇の駐在員の身だから美味しいものばかり食べなれているのだろう、どんなところへわたしを連れていくつもりなのかと思ったら、ちょっと古ぼかしいビルへ入り、エレベーターのドアが開くとそこには靴を脱いでリビングルームのように寛げる空間があった。高級ではないが、とても快適なお店だった。あらゆるもののクオリティを知ったセンスの良さに少しだけ恋に落ちた。ワインをちびちびとやりながらまたお喋りに耽った。
しかし、この後失敗して、こんなに楽しい一日をくれた彼の顔を少し曇らせた。もうわたしなんて消えてなくなってしまえばいいのにと肩を落としながら家路についた。
週明け、心が晴れず、笑い方を忘れてしまったような孤独の中に閉じこもったまま仕事をしていたが、ボスがそれに気付いて周囲にわたしの様子を伺いに来たという話を聞いて、ふと違う風が吹き込んだ。日頃仲良くしている、わたしに酷い一言を放った彼女の上司にこちらの部署とあちらの部署の兼ね合いでの問題点について話を聞いてもらった。彼はそこそこいい加減で、そこそこ真剣、そしてとてもスマートなのでとても信頼している人だ。親身に話を聞いてくれてその日の部内会議で論議項目のひとつに入れてくれた。その次の日、この不穏な動きに気付いたのだろうマネージャーに呼ばれ、突然、
「他の部署から叩かれるばかりの辛いポジションだと思うけれど、日頃からよくやってくれてると思っていますよ。ありがとう。」
という言葉をもらったのだった。あれこれと問題点を話し合い、少しずつベターになるように働きかけていこうと言ってくれた。今度は違う感情で泣いてしまいそうだった。