DiaryINDEX|
past|
will
| 2010年08月19日(木) |
Brokeback Mountain |
なんとも強烈なインパクトの映画だった。結果的に生涯に渡って心を決して離さず愛し合った二人の男の物語だ。牧場の一夏の季節労働者として雇われ出会ったイニスとジャック。どこから見ても簡潔で男くさいホンモノの男だ。無口な出だしだったが、二人が喋りだしてすぐに字幕をOnにした。喋りもホンモノであった。山篭りしながらの過酷な労働ゆえに、仕事を終えてふと気を緩め、簡素な食事を採り、言葉少ないながらも会話する時が二人の唯一の安楽の時間だった。雄大なワイオミングの自然の中で来る日も来る日も二人きり。いやでも精神的な絆が深まるシチュエーション。そしてある日、二人は一線を超え、肉体的にも結ばれてしまうのだ。ここまでは驚かなかった。"俺は女が好きだ"とお互いに断言していたし、イニスに至っては婚約者がいたのだから、女どころか人っ子一人いないような場所で女の温もり、人間の温もりが恋しくなった、しかし目の前にいるのは男一人だけ、仕方ない、それでもないよりはいい。こんな一時凌ぎだと思っていた。
季節労働が終わり、約束もなく別れた二人は言い知れない胸の痛みを感じながらそれぞれの暮らしを淡々と運命に抗うことなく生きる。時は60年代。まだ同性愛者が大きな罪の意識を持たずには暮らせない時代だ。イニスはワイオミングですぐに結婚し子供もできた。ジャックはテキサスでロデオで生活していた。遠く離れた二人がジャックがイニスに宛てた一枚のポストカードをきっかけに再会する。4年の月日が流れていたが、二人の中ではあの夏のことがあまりにも鮮明に昨日のことのように残っていたのだろう。労働は過酷でも美味しい空気と男の夢に浸っていられた時間が記憶の中で一番輝いていたに違いなかった。激しく抱き合いキスをする二人。それ以来、イニスは妻に嘘をついては年に一、二度の割合で思い出のブロークンマウンテンでジャックとの逢瀬を持つようになる。やがてジャックも家庭を持ち、日に日に家庭を崩壊させていくイニスと裏腹に家庭内での地位を確立していったが、二人の関係の中ではホラれるほうのジャックは完全に女役であった。もっと会いたいと駄々をこね、イニスを困らせ、会えないことにやきもきしてメキシコへ行きゲイを買ってしまったりする。そんな関係を20年も続けた。結局一夏の出会いが二人の人生を生涯に渡って大きく支配してしまったのだった。
雄大で美しいブロークンマウンテンの湖畔でウイスキーを傾ける白髪交じりのイニスとジャックは、ウイスキーのコマーシャルのような渋さだった。生生しいセックスシーンがないのが余計見ているほうの想像を掻き立て混乱させる。どうしてもこの渋い男二人が肌と肌を触れ合わせて。。。などという想像ができない。男の夢と浪漫、そして友情と愛情、全てが散りばめられていて、複雑ながらもしっかり魅せられ、叶わなかった夢や無念な愛情が涙を誘うのだった。