DiaryINDEX|
past|
will
目を覚ますと外は見事な秋晴れ。向かいの山頂までくっきりと見渡せる。空気はきりりと冷たい。キャンベラには刻々と厳しい冬が迫ってきているようだ。
昨日はマーティンと日本食レストランへ行き、石狩鍋やお寿司をつまみに赤ワインを飲みながら沢山話した。もう悲しいとか寂しいとかそんな感情も枯れてしまって、ただただ会話の節々に散りばめられたもう一緒の未来はないという事実に不思議な気持ちになった。
ミケはいたずらっ子みたいな顔をして植木の陰に隠れてブートに荷物を積むわたし達を覗いていた。またね、いつか一緒に暮らせる場所を見つけて迎えに来るからねと言ったものの、内心もう二度と会えないような気がした。
シャトルバス乗り場でハグをして別れた。シドニー行きのバスがゆっくりとキャンベラ・シティのセンターの朝の小さな渋滞を抜けて行く。やがて空の青と乾いた大地の褐色とそこに力強く根を張る木々の緑の気が遠くなるような単調な景色の中に入り、黙々と北東へ進む。もう二度とこんな切ない別れは味わいたくないと思った。隣の席に座っている初老のオージー女性が楽しそうに日本で英語を教える娘を訪ねていった思い出話をしているのをぼんやり聞いていた。昼にシドニーに到着。そのまま国内線でパースへ飛んだ。
真っ赤な夕陽がもう少しで完全に消えてしまう寸前のパースが見えてきた。あぁ、1年ぶりにやっとここへ帰ってきたという感動と共に、キャンベラから来てみると大きな都市に思えて少し心細くなった。空港には友達夫婦が迎えに来てくれた。東南アジアのような活気漂うフードコートで冷たいコピとナシゴレンの夕飯を摂って、ケンウィックにある旦那さんの親戚のケビンの家へ送ってくれた。広い庭にはハーブや果物が栽培されている。そして楽しそうにそれを見せてくれる彼はとても素朴な青年に見えてひとまず安心した。しばらくここにお世話になります。