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| 2006年03月11日(土) |
Cafe de soir |
ゴッホが精神を病みながら有名な作品「夜のカフェテラス」を生み出した場所、アルル(Arles)へドライブ。ローヌ川の向こう側に広がるほんのり気だるく淀んだ空とくすんだ橙色の屋根の家々、こつこつと歴史を刻んで重みがかったような町並はどこを切り取ってもぽってりと塗られた彼の油彩画のよう。細い迷路の路地を散歩した。マーティンはここへ来てから本当にSweetsをよく食べる。小さなケーキ屋の前で立ち止まっては、これはおばあちゃんが作ってくれたとかクリスマスに食べたなどと言いながらショウウインドウを覗き込みスーッとお店に吸い込まれていってしまう。チョコレートを塗ったそば粉のクレープを買って女子中学生のような顔で食べながらトロトロとわたしの後ろを歩く彼は、ひょっとしたら内股になっているのではないかと想像だけしてひとりにやにやと笑った。
夕方になるとお店はパッタリと閉まる。この辺りは土日は町の住民全員がお休みといったかんじ。ゴッホの描いたカフェもすぐに見つけたけれど営業していなかった。町の中心の大きな通りが通行止めになっていて人だかりができているので何事かと看板を見ると牛のイラストが描かれている。嫌な予感がして心臓が震えた。この町は伝統的な闘牛や牛追い祭りが名物だと聞いた。が、何も起こらなかった。二頭の馬に人間が跨り、その間を子牛が走って、その後ろを子供達が走っているという意味不明なものが通り過ぎただけだった。ほっとしたもののその後目にしたポスターには来月の牛追い祭りの告知が書かれていた。勇敢な者が参加するなどと言われているが、ひたすら怯えた牛の目を見れば精神的な弱い物イジメにしか見えない。
ともあれここは過去と夢の中に吸い込まれていってしまうような魅力のある町だ。