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My life as a cat DiaryINDEX|past|will
パースでシェアハウスに住んでいた頃、就寝中に窓ガラスを割られ数人の強盗が押し入ってきた。まだ動悸の冷めやらぬその二日後の夜、マーティンと中華料理屋の二階の席でぼそぼそと無言で夕飯を食べていた。が、一度口を開いたら最後、胸の奥からこみあげる恐怖の記憶と大事にしていた物を盗られた悲しみとで事の顛末を吐き出しながらポロポロと泣きだしてしまった。うろたえるマーティン。そこに薔薇売りのおじさんがいつものごとくやってきた。普段は"食事中に鬱陶しい"と文句を言うのに今日ばかりはグッドタイミング。勢いよく呼び止め人差し指を立てた。「何色?」とおじさんがマーティンに聞く。わたしは少し泣き止んで薄目を開けてみた。ピンク、赤、白、黄色がある。心の中で"わたしだったら黄色は選ばないわっ"と思った次の瞬間、マーティンは"Yellow"と答えた。わたしはプッと吹きだしてあっさり泣き止んでしまった。その夜、マーティンはその黄色い薔薇をコップに挿してベッドの脇に置いてくれた。
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