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| 2008年09月16日(火) | ◎スクロヴァチェフスキ＠東京芸術劇場 |
一夜明け、今日はアカデミックに。
決して昨日が知的やなかったとはいいませんが。
朝から雨の八王子を出発。
東京のラッシュを体験しながら渋谷へ。
しかし、初めて座席のない車両に乗った。
その時はラッシュはおさまっていたので
車内はがらーんとしてて まさにハコ。
こういう時って どこに立てばいいかわからないもんやね。
しかたなく 座席がしまってあるところに
背中をもたれさせてたら
乗ってきた人がわたしのすぐ前に窓の方に向かって立った。
つまり50�僂�らいあけて 向かい合う形。
これ、すごい気まずいし、居心地悪い。
だって 車内はすいているのに
2人で向かい合ってんやもん。
人の習性なんやろね。
しかたなく わたしも窓の方を向くことにした。
なんや 不思議な乗り物ななあ･･･。
渋谷では Bunkamuraでオフィーリアを見て
それから次は出光美術館で平櫛田中、松園、仙�僂鮓�た。
ここの美術館は 休憩スペースが皇居に向かっていて
とても眺めがよかった。
それから人形町で鯛焼き食べて 池袋のジュンク堂で地図を買って
いよいよ芸術劇場へ。
とても楽しみにしていた公演だ。
実は職場の人のミスで 明日休めなくなり
この公演はあきらめなくてはならないところまでいった。
でも どんな無理をしても聴きたかったので
今日は名古屋終着の最終の新幹線に乗って 名古屋泊。
そこから朝一の 「こだま」 で出勤することにしたんだ。
それくらいわたしは スクロヴァチェフスキがすきだ。
この人の、85歳とは思えない、
青年のような透明感と清々しさで
力強く明日を目指す演奏がだいすきだ。
しかしながら わたしはクラシックには詳しくない。
読売日本交響楽団も初めてなら、
今日のプログラム、
シューマン 「交響曲第2番」
R.シュトラウス 「ツァラトゥストラはかく語りき」
も初めて聴く。
「ツァラトゥストラ」 は、
「2001年宇宙の旅」 とセクマシで
冒頭部分は非常に有名やけど 全曲は聞いたことがない。
めっちゃ疲れてるねんけど 寝えへんやろか････。
3階席の、パイプオルガンが真正面に見える、
豪華な芸術劇場のふかふかなシートに座って
そんなことを考えたわけだが、
心配は無用だった。
シューマンの方は ハ長調だったので 明るい曲調だった。
激しくはないが、
ていねいに 端正に奏でられる演奏に
ここが洗われる気がする。
このピュアな響きは
年を重ねたが故のものなのか、
それとも この人の持つ少年性なのか。
とにかく心に沁み入る。
弦の音がやさしい。
それがハーモニーとなって溶け合うと
涙が出そうなほど美しい。
でも、もっと美しいのはユニゾン。
ひとつの音が たくさんの弦から鳴らされる時
えもいえぬ ゆるぎのない響きが伝わってきて
力づけられる気がする。
曲は わたしにはよくわからない。
モーツァルトとは やっぱりちがうなあ。
もう一回この曲聴きたいか、って言われたら
「別になあ････」 みたいな感じ。
曲というよりは 音と響きに感銘を受けた感じだった。
休憩をはさんで いよいよ 「ツァラトゥストラはかく語りき」。
最初のところで 笑わへんように 気ぃつけよう。
スクロヴァチェフスキの手が上がって
トランペットの音が鳴り始めた。
重なるホーン。 歯切れのいいティンパニ。
映画のイメージもあって
雄大な 壮大な宇宙をイメージしていたが、
今日聴いたのは
ひらかれた明るい空間に光が満ちていくような そんな感じがした。
響きのひとつひとつに品格を感じた。
で、プログラム解説によると
曲は 7つか8つのテーマに分けられているらしいが、
無知なわたしは
どこがその区切りか全くわからない。
だから どの部分かわからないけど
バイオリンが高い音を小さく奏で、
それをバックにきれいな和声のメロディが聞こえてくるところと
コンサートマスターがソロを弾くところは
ほんとによかった。
そして、コントラバスが 低い音を3度ほど小さく鳴らして
スクロヴァチェフスキは両手を上げたまま静止。
ホールに静寂が流れた。
そして、この指揮者が85歳に戻り 手を下すと
おおきな拍手で静寂が破られた。
え、え。 終わったん？ これで終わりやの？
思いもつかなかった終わり方に あっけにとられて
あわてて拍手をした。
あ―、しまった、予習しとくんやった。
そしたら あの静寂が楽しめたのに。
演奏が終わってから拍手までの静寂は
音楽好きにはなににもかえがたい至福の瞬間やのに。
あんなスケールのでかい導入部分やから
終わりも壮大やと 勝手に思ってた。
あ―、くっそ―。
でも、やっぱりよかったな、スクロヴァチェフスキ。
なにかな、
夏休みに少年がセミ取りするときの
そんな気持ちが音楽に現れてる。
目標を定め、
どきどきしながら近づき、
さっとセミを取る時のわくわく感と達成感。
ひとりひとりが それぞれ心に大事にしまってるのに
みんな共通の忘れられない気持ち。
そんなものが音楽の中にあった。
痩身で白髪のこの指揮者もまた、
きっとここでセミを取ってたんだ。
そんな気がした。
だって アンコールに出てきたスクロヴァチェフスキの表情は
虫かごの中のセミをのぞいて
うれしくてたまらない、あの表情だったもの。
もちろん、夜はとっぷり暮れていた。
し忘れたことがあったので
頼んで 友人に東京駅まで来てもらった。
もう最後までお世話かけっぱなし。
ごめんなさい。
ありがとう。
じゃ、また10月に。
それから 11月も。
で、12月もね。
名古屋のホテルにチェックインしたのは
もう0:00を過ぎていた。
靴を脱いで お風呂に入って 残っていた鯛焼きをほおばった。
東京の味がした。
つめたくなったあんこが あまくて ちょっとせつなかった。
