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お元気ですか。今どこで何をしているのでしょうか、相変わらずキミが意固地に「仕事」と呼びたがったママゴトを続けながら、声を嗄らし指を痛めているのでしょうか、それともいい人でも見つけましたか? 僕はキミがあの通用門から出てくるところを見るのがいやでした。何度か迎えにいきましたね。劣悪なエアコンディショナーにさらされたキミの肌は脂が浮き、ファンデーションもところどころ剥げかけて、酷使した目はどろりと黒ずみ、僕の車の助手席に溜息とともに坐りこんだキミを直視することはそのまんま、自分への無言の脅迫を受け取るように感じられて、ミラー越しにその疲れた横顔を見やるのがやっとでした。 何の創造性もない作業のような「仕事」に、薄汚れていくキミを見ていることがつらかったのです。そんなことで自分をすり減らしていくことに平気でいられるキミの神経が僕には理解できませんでした。キミほどの人が何故、と僕は焦っていました。なのにキミは、けっこう楽しそうに、安い時給でこきつかわれて、忙しいから会えないだの、休みの日くらいゆっくりしたいだのと、生意気なことを言いはじめました。 まさか今でも、ママゴトじみた「仕事」とやらにかまけてえらそうにしているんじゃあないでしょうね。 さて先日僕は父親になりました。彼女に似てふっくらとした可愛い女の子です。出産を終えた彼女の腹を撫でていてふと、キミの固く締まった腹の手触りを思い出しました。それで今、キミが何をしているのかと、訊ねてみたくなったわけです。 返信お待ちしています。それもまた例の、思いきりスノッブな返信をね。 N |