月に舞う桜

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2020年05月08日(金) 映画『トイ・ストーリー4』

今日の金曜ロードショーは『トイ・ストーリー3』だ。
それで思い出したけど、そう言えば『トイ・ストーリー4』の感想を書いていなかった。

私が2019年に観た中で最も良かった映画の一つが、『トイ・ストーリー4』だった。
(良かった映画のもう一つは、『主戦場』)

パート1がヒットして映画がシリーズ化されても結局パート1が一番面白い、というのが私の中で定説だったけど、トイ・ストーリーは別!
シリーズ4作の中で『トイ・ストーリー4』が断然、良かった。
スタッフが、いろいろなことをきちんと考え抜いて作ったのだろうな、と感じる作品だった。

どんな生き方も否定されず、それぞれに尊重されているところ、それから何より、友情や絆を大切にしつつも、そういったものを鎖にしていないところが良かった。
ウッディが大きな決断をしたときも、仲間たちはウエットすぎず、案外あっさりしていた印象。みんなが、ウッディを信頼しているからだと思う。
友情を鎖にしない、絆で相手を縛り付けない。それは、相手を心から信頼していなければできないことだ。

おもちゃたちはみんな、他人(特に人間)が決めた存在価値や役割に縛られることをやめ、自分で生き方や役割を見つけていく。
ボー・ピープとギャビー・ギャビーは、女性としての生き方が対照的だけど、それぞれにエンパワメントされている。どちらも否定されず、大切な生き方として描かれている。

ウッディがボイスボックスをギャビー・ギャビーにあげたのは、「クリアに声が出る」というアンティーク人形としての価値――人間に決められた価値――に縛られず、自分の人生の価値を自分で決めることができたからだろう。
他者から与えられた役割や価値から自由になることは、主体性を持った個人として生きていくのにとても大切なことだ。
それは、自信にも繋がる。

いま、「絆」や「一致団結」が盛んに言われるけれど、そういった言葉がもてはやされるようになったら、気をつけなければいけない。
それらの言葉は、人々をたやすく全体主義に駆り立て、「個」を無化して踏みにじる方向に仕向けるから。

そういう意味でも、『トイ・ストーリー4』は、いま必要な作品だと思う。


桜井弓月 |TwitterFacebook


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