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絶対的な響きをもって鐘の音は時を告げた 13
背中が窓の向こうに消えていく。 乱菊はしばらく身動ぎもせずにいた。ギンはよく自分を置いていったけれど、その背中を、遠ざかるその背中を見送ったのは初めてではないだろうか。 床が揺れているように感じるほど、立ち眩みを起こしていたが、乱菊はふらふらと窓辺に歩み寄り、窓枠に掴まって外を見た。ギンの姿はとうにない。部屋の灯りに照らされた常緑樹の厚い葉が重なり、その奥は闇に続いている。
遠くで、時を告げる鐘の音が鳴り始めた。
林を抜け、町並みを通り抜け、再び林に入ったところで、ギンの耳に鐘の音が届いた。それは人々に時を告げるために鳴らされる鐘の音で、おそらく、一日の最後に鳴らされるものだろう。 どこか哀愁を漂わせた金属特有の固い音が、一定の間隔をもって響き渡る。 ギンは足を止めると、手近の大樹に登った。一番高い枝まで登ると、枝を跨ぎ、幹に寄りかかり、重なる葉の間から覗く、暗いくらい空を見上げた。
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