猫のお題:6【アメリナ】

06.寝込みを襲う
(アニメ姫リナ。れぼ終了直後。)


 魔王の亡霊との戦いのあと。荒れ果てた街の中はこれからを生きようとする人々の活気で満ちていた。一晩中続く祝いの宴も終わり、先に休んでいたアメリアのベッドにリナが飛び込む。
「あめりあぁ、ただいま〜」
「……リナさん?」
突然圧し掛かってきた重みに、アメリアが重たい瞼をゆっくり押し上げる。
「……こんな時間まで飲んでたんですか? リナさんが一番疲れてるはずなんだから、早く寝なきゃダメって言ったのに。」
やっぱり寝るのを確認するまで一緒に居るんだったなんて、疲れに任せて真っ先に眠ってしまった自分をひっそり責める。そんなアメリアのほっぺたをぎゅーっとつねって、またがるリナは眉を寄せた。
「なにいっちょまえにほごしゃぶってんのよ。あめりあのくせに。」
「ちょっ、いたいいたいいたい! やめてくださいリナさんっ!」
夜に気遣って声をひそめながらも、アメリアは痛まない左手でぱたぱたリナの手を叩く。リナはすぐに手を離し、アメリアの腰元にまたがったまま布団の上から覆いかぶさった。傷にひびき、アメリアが少しだけ呻く。
「ちょっとリナさ、」
「かっこよかった」
よっぱらいに文句を言おうとしたところで、耳元の囁きがそれを制した。
「……あんたの背中、かっこよかったわ。」
聞き間違いだと思った。だってこの人は、はるか遠いところにいる憧れのひと。
「ヒーローみたいだった」
手を伸ばしても届かない背中ばかり見てきたひと。
聞き間違いでもなければ、嬉しすぎてどうにかなってしまう。
「……よっぱらいの寝言でも、嬉しいです。」
「失礼ね。」
くすくすとリナは笑う。薄く滲んだ視界でその笑顔は、暗がりに映える銀髪に彩られ、とろんと蕩け出すように儚い。
たまらずアメリアは起き上がり、痛む腕にも構わずにリナの肩を掴んで体の下に押し付けた。
「……アメリア?」
少しだけ我に返ったようなリナに反して、アメリアの理性はぎりぎりだ。
色素の無い髪に触れ、撫で上げる。露わになる額と、すっかり染まった銀の生え際にキスを落とせば、ひっくり返るリナの声。
「あ、アメリア……!」
「手加減します。手加減しますから許してください。」
切羽詰りながらも開き直った声に、ますますリナの声は上ずった。
「手加減って、ちょ、ま、」
「ごめんなさいごめんなさい」
言いつつ滑らかにすべるアメリアの指。

リナの髪の色も、アメリアの腕も、完治するのに思いの外時間がかかったが……その理由は誰にも言えない。



寝込みを襲って返り討ち。ていうかアメリア自重。

2006年02月24日(金)
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