猫のお題:3【ミリリナ】

03.まねっこ遊戯


 事情聴取に現場検証。ソラリアの謀略に巻き込まれた折の厄介な事後処理に付き合ってはや半月。ひとつところに留まることに慣れていない面々は毎日同じ町ののんびりした空気にすっかり飽きていた。リナもそうだ。今朝も、ルークやガウリイでさえわずかな刺激を求めて広場の掲示板に日雇いの仕事を探しに行った。
リナは今日は趣向を変えることにした。
長期滞在の経済的負担軽減の為、同室となったミリーナは今日も相変らず本を読んでいる。宝探し屋なんてやっている以上、根は奔放なのだろうが、こうして定住の真似事なんてやってもそこまで参ってはいないようだから不思議だ。口にしないだけかもしれないけれど。
そんなミリーナを正面からじっと眺め、リナは見慣れたようで見慣れない顔をまじまじと観察する。
伏せた細くて長い銀の睫毛。エメラルドの瞳。線が細く、鋭くも穏やかにもなる知的な面立ち。なんだか本当に、慣れない顔だなと思う。
「どうしたの」
ページをめくりながら、向かいの席でじっと自分を見つめるリナに言ったのは、随分経ってからだった。
最初から無反応で、もうずっとそれで通すのかと思っていたのに今更言うのは、実はずっと気になってたのだろうか。すぐに飽きるだろうとでも思ってたのかもしれない。
微かにだけ首を傾げたミリーナに、リナは同じだけ首を傾げる。
「べつにー」
そうとだけ言えばミリーナはそれ以上食い下がるでなく、そうと呟いてまた本に没頭した。

 さすがに飽きてきた頃、ミリーナが席を立つ。
「下でお茶でもどうですか?」
リナの退屈を察して気を遣ったのか、ミリーナは苦笑いだった。気付いているのか居ないのか、リナは嬉しそうにあとに続く。
「珈琲を」
「あたしも」
注文を済ませたあとで、ミリーナは少しだけリナを見た。けれど結局何も言わない。空いた店内に、ウエイトレスはすぐ戻ってきた。
テーブルに置かれたミルクも砂糖も入れず、ミリーナが試すように珈琲を口にすると、リナも眉間を寄せてブラックを飲み下す。
「――楽しい?」
ミリーナはついに笑い出した。
珍しいものを正面から見て、リナは目を丸くする。
「え、わかった?」
「分かるわ。まねっこ遊びをしてるんでしょう?」
「うん。でもミリーナ、アクションが少ないからやりがいが無いわ」
ていうかある意味大変だったと言って、リナも笑い出した。
「それは、ごめんなさいね」
言ってミリーナは、目の前の女の子同様暇を持て余してる様子のウエイトレスをもう一度呼んで、ティラミスを注文する。リナは喜び勇んで「あたしも!」と言った。



こっちも微妙に甘やかしですみません^^
きっとミリーナはそんなに甘いもの得意じゃないので一口食べてリナにあげたと思います。


2006年02月21日(火)
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