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■ 猫のお題:1【フィリリナ】
01.日だまり依存症
「フィリア、きてきて」 洗濯物を干しているフィリアを、シーツの裏側からひょっこり顔を出したリナが手招きしたのは、よく晴れた日の穏やかな午後だった。 広い庭のある宿屋。縦横に走るロープにかかる大量のシーツの合間を借りて、中々洗えない旅装束を洗っていたはずだが。 「もう干し終わったんですか?」 「とっくよ。いいからこっち来てよ」 なんでも手早く済ます少女はこんなときにもてきぱきしたものだ。もうひとりの少女の分は、その立場上慣れないのか初手から手間取っていたのを見かねてリナが引き受けていた。(代わりに色々と雑務を任されているけれど) フィリアは最後の一枚を干し終えて、しばった髪をおろしながらシーツの影にひらりと消えたリナのあとを追った。 「リナさん?」 はためく白い視界の中にリナを見失って、フィリアは困った声をかける。 「こっちよ」 楽しげなリナの声の方を向けば、影が走り抜けていくのが見えた。困らせようとしてるのか、遊んでるつもりなのか、そんな気はさらさらないのか。フィリアは考えようとしてやめた。 そうして見え隠れする影やシーツの影に揺れる赤毛を追いかけて、ようやくその細い腕を掴まえた。 「もう、どうしたんですか?」 「へへ」 捕まったリナは嬉しそうにはにかんで、反対にフィリアの腕を掴んでまた走る。何をはしゃいでいるのか、リナは非常にご機嫌で、フィリアも仕方ないなと付き合った。 元々はこの辺り一体の大地主だったと言う宿屋の敷地はばかに広く、シーツの群れを抜けても、まだ芝生が広がっていた。 いくつか植えられたさるすべりの下で、リナは立ち止まる。 日の溜まる場所で、頬を染めながらにっこり笑うから、どきりとした。 「ね?」 なにが「ね?」なのか、それだけ言って、掴んだままのフィリアの腕を引いて腰を降ろす。 すとんと落ち着いたフィリアの膝に頭を乗せて、驚く彼女にも構わず目を閉じる。喉を鳴らす音さえ聞こえそうな気持ち良さそうな表情には、聞きたいことがいっぱいあっても声のかけようが無い。 頬に落ちる陽だまり。 「たまにはいいって言って。」 機嫌がよくても悪くても、周りを巻き込まずには居られないんだなぁと溜息をつきながら、仕方なしにフィリアは微笑んで膝の上のふわふわの毛並みを撫でた。 「たまには、ね。」
ちょ、ばかっぷる!あんまりリナを甘やかしちゃダメだよフィリア!
2006年02月19日(日)
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