魔法学校パロ【アメリナ】

ハ ー マ イ オ ニーコスにもえていただいたのでていうか私がもえたので(笑)魔法学校パロです。
って言っても特に原型は留めて無いです。
設定としては11歳で入学して9年制かな、とか。無駄に色々考えてます。
だからこのお話ではリナ13歳、アメリア14歳?くらい?
メインテーマはリナのふとももはぁはぁです^^




 「アメリアせんぱーい」
耳を疑うような甘えた声が聞こえたのは、魔法薬の授業を終えて廊下を歩いているときだった。聞き流すか振り返るか決断をくだす前に、声の主が背中に飛びかかってくる。
「せんぱいってば」
腰に巻きついて肩口に顎を乗せ、聞き間違いではなかったらしい甘えた声で擦り寄っているのは、
「……何の用かしら、リナ」
「授業でケガしちゃったの。治してー」
黒魔術科の3年生。1年後輩の問題児だった。
「また上級生の授業に乱入したのね」
「乱入って。人聞き悪い言い方しないでよ。原則としてどの学科の何学年の授業でも公開されてるものは受けることができる。生徒手帳にも書いてあるわ。」
「白魔術科の授業には一回も顔出してこないくせに」
「だって、フィリアが白魔法の回復系適性試験にオーケー出してくれないんだもん。」
「先生でしょ、フィリア先生。――で? どこをケガしたの?」
言ったってどうせ聞かないことは分かっていたから、わたしはすぐに話を切り上げた。わたしに対してだって、普段は「先輩」だなんて呼ばない。おねだりとごまかすときだけに使われる。本当にろくでもない後輩だった。なんだかんだ甘やかすからだと、クラスメイトには言われているけど。
「……ケガ、したって言ったわよね?」
振り返り、小柄な体をざっと見てみても怪我は見当たらない。
「うん、ほらここ。」
言って無造作に、リナは短いスカートをまくりあげた。露わになる脚の右内腿に、深めの切り傷。陽に当てられたことなどないような真っ白な肌に、赤い筋がくっきりと眩しかった。
「血は止めたんだけど、歩くたびに痛くって。だから早く治し、」
「――ばかっ!」
思わず叫んで、リナの纏う黒魔術科の証の黒いローブを掴み、前でがっちり固く重ね合わせる。
「え、え?」
戸惑うリナに集まっていた視線から引き剥がすように、合わせたローブの胸元を掴んでさっさとその場を歩き去れば、半ば引きずられる形で着いてくるリナは、相変らず困った声をあげていた。

 そのまま放課後の騒がしさを残す校舎を離れ、寮に入る。階段を昇る間、文句ばかりつけていたリナもさすがに諦めたのかすっかり大人しくなっていた。
「白魔術科の寮って、雰囲気違うわね。」
「そう?」
「ここ、アメリアの部屋?」
「そうよ」
整然と並ぶドアのひとつの前で止まれば、リナは好奇心を含んだ目で数字のついたプレートを見上げていた。わたしも黒魔術科の寮に行ったことは無いけど、もはや違う人種と言っていい黒魔術科の歴代の生徒たちが家同然に過ごしてきた空間が、こことはまるで違うだろうことは想像がつく。
「入って」
小さな呪文で開錠してリナを促す。リナは控えめにおじゃましまーすなんて言って入っていった。わたしは少し笑って、あとに続き扉を閉める。自動でかちゃりと鍵が落ちた。
「へー、きれい。アメリアって1人部屋なんだ。」
「ええ。――ここに座って。」
促されるままソファーに座るリナの視線はまだ落ち着かない。
「校長の娘だから?」
「それもあるわ。みんなが知ってることだしね。クラスメイトとして仲良くはできても、プライベートまで一緒になると気疲れしちゃうんだそうよ。」
わたしの機嫌を損ねてはどこで成績に響くか分からない。“ここ”での評価はのち一生ついてまわるのに。なんて、誰もが考えている。ふぅんなんて、気のない相槌を打っている目の前の女の子を除いて。
「傷見せて。治すから。」
「あ、そうよ。すっかり忘れてた。」
歩くたび痛いなんて言ってたくせに。好奇心が何より勝るらしいリナの言葉に、わたしはまた少し笑う。
「その為に連れてきたんだから、忘れないでよ」
「あそこで治してくれればよかったのに。急に大声出すからびっくりしたじゃない。みんな見てたわよ」
まったく自覚の無い言葉に溜息が出た。黒魔術科は男性比率の方が圧倒的に高いんだから、もっと気を遣うようになるんじゃないかと思う反面、だからこそそういう部分が育たないのだろうかとぐるぐる考えてみる。結論としては、リナだから仕方ないのかも、だった。
「びっくりしたのはわたし。みんなが見てたのはあなたよ。」
「は? なんで?」
なんでじゃない。あんな健全な男子生徒(あとはリナに好意を寄せる一部の女子生徒)が行き来する場所でいきなりスカートをまくりあげるなんて。その神経にこっちが問い掛けたい。ましてそれが、問題児ぶりが隅々まで響き渡っているとは言え、黙ってれば小さくてかわいらしい女の子で、しかも――自分の想い人だったら。
「……いいから、脚、出して。」
説明するのもばからしくなって、わたしは溜息と共に言い捨てた。リナは少し憮然としながらも大人しくスカートの裾をたくしあげる。カーテンの隙間から差し込む白い光に照らされて、脚も傷跡も嫌に生々しく見えた。
思わず息を呑んだのを隠すように、早口で呪文を唱える。手を翳し、淡く光る癒しの力をあてがえば、赤く腫れた傷跡がゆっくりと消えていく。
わたし自身はそれほど怪我をすることが無いけれど、こうして頻繁にこの光を浴びているリナが言うには。
「きもちいい」
撫でられてる猫みたいに、リナは呟いた。
「前は手近な白魔術科の子を掴まえて頼んでたんだけどさ、今はあたし、アメリア一筋なのよ? だってアメリアのが、一番きもちいいんだもん。」
秘密を打ち明けるような小声で、リナがにっと笑う。
「上手い下手ってあるのかしら、やっぱり。アメリアは白魔術科の中ですごく優秀なんでしょう? フィリアが言ってたわ。」
心を乱す言葉を口にしておいて、わたしの答えさえお構いなしに、リナは上機嫌で話していた。治りかけの薄い痕を残し、呪文が途切れる。ほとんど無意識に、ピンクの滑らかな線が描かれた脚に手のひらを這わす。内腿がかすかにふるえた。
「……っ」
反射で出かけた声を咄嗟に抑えたような顔で、リナがわたしを見た。
「きもちよかったんでしょう?」
掠めるように指をすべらせて、もっと深くまで脚を辿る。リナが言葉もなく眉を寄せた。
「もっときもちいいこと、してあげようか?」
「……アメリア?」
憎らしいくらい何も理解してない顔が、きっと歪んだふうに笑っているわたしの眼をじっと見る。熱く燃えている心臓とは反対に、冷え切った指先が他人のようにしなやかに動いた。

2006年02月18日(土)
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