君色の空【アメリナ】

最近「アメリアが大好きなリナ」がブームです。
アメリアからの愛情は深くて大きくて、それを上手くコントロールできていて、リナを包み込むだけの器量があるんだけど、リナからアメリアへの気持ちは自分ではっきり把握できてない分持て余してて、上手く扱えないからどんどん膨れてっちゃう感じ。
で、突然暴発してよく分かんなくなってもうアメリア嫌いめんどくさいばかっみたいな逆ギレをするって言う。とんでもなくめんどくさい^^
そういうリナを苦笑いしながらもかわいいなぁって思っちゃうアメリアにすごくもえます。
うちのカップリング(両想いの場合)は基本的に受けは「相手がすごく好き」で、攻めは「相手のことが大切」って言う感じなんだと思います。セラムンだと逆です。何度も言うようですが、うさぎちゃんは精神的に攻めなので。




 久しぶりにセイルーンに立ち寄ってみると、ほとんど間を置かず出迎えてくれたアメリアはドレスを着ていて、忙しいところに来ちゃったかなとちょっと遠慮した。
実際にはゲストが今朝方帰ったところだったらしくて、今は暇だと言う。
アメリアの私室のテラスに通され、のんびり午後のティータイム。
「フィルさんの戴冠式、出席できなくてごめんね。」
「ううん、いいのよ」
「でもこれであんたも第二王位継承者に繰り上げってわけか。ますます身分違いになるわね」
冗談めかして言うと、アメリアも秘密を打ち明けるように小声で身を寄せた。
テーブル越しに近づいたアメリアの首筋から、品のいい香水の香り。
「公式では無いけど、実質第一王位継承者よ。」
「え?」
「姉さんは最近うちの勘定に入ってないのよ」
背もたれに身を戻し、愉快そうに笑って言うが……そんなんでいいのか?
「2人居るんだし、1人ぐらい好きにやったっていいんじゃない?ってのがわたしと父さんの意見。わたしは今の立場、別に嫌じゃないから。姉さんがやりたくないならわたしがやるわ」
「ふぅん。じゃあアメリアが王位継ぐんだ」
「そうなるかもね。まぁそれは当分先のことになるとは思うけど、結婚はそろそろ考えないとね」
なんでもないふうにカップを持って、一口飲み下しながら。
「世継ぎも産まないといけないし。」
やっぱり若いうちに産んでおきたいわ、と、続いた言葉はもうほとんど頭に入ってこなかった。
――結婚? 子供? アメリアが?
アメリアが誰かとややこしいことをして、赤ちゃんを授かって、それで、大きなお腹で?
「ちょっと、どうしたの、リナ? 顔色悪いわよ」
アメリアが慌てて席を立つ。ドレスをひるがえしてあたしの隣に立つと、額に額を寄せた。
「熱はない? 調子悪かったなら言ってよ、ほんとリナは――」
言う言葉を遮って、椅子から身を乗り出しアメリアの腰にぎゅうとしがみつく。
ドレスはふわふわと肌触りがよくて、薄い布越しにアメリアのやわらかい肌とそのぬくもり。香水と混じるようにして、アメリアの匂いがした。
「……ちょ、リナ、」
戸惑う声。香茶のおかわりでも持ってきたのだろうか、女官と思われる誰かの足音が気遣うように途中で止まる。
あたしは構わず腕に力をこめて、アメリアのお腹辺りに顔を埋めた。
「……どうしたの、リナ?」
ためらうように頭に手を置いて、ふりほどく気配も無くアメリアがゆっくりあたしの髪を撫でる。あたしは甘やかされている。
ずっとこうやって甘やかされていたかった。
誰かと結婚して、子供を産んで、この手が、その子供の頭を撫でるなんて嫌だった。
あたし以外を抱くなんて嫌だった。
「――結婚するなら、子供を産むなら、あたしが死んでからにして」
「……リナ」
「そんなに長生きしないからさ。もうちょっと待ってよ。」
押し付けた額から、腹筋が少し硬くなるのを感じる。頭上から笑い声。あと、少し離れたところから押し殺した女官の笑い声。
なによ、みんなして。
「不吉なこと言わないでよ。」
「笑い事じゃないわよ。」
悔しくなって、でもどんな顔して顔をあげればいいかも分からなくて、あたしはしがみついたままで悪態をついた。
頭を撫でていた手が、髪をすくいあたしの両頬に触れて、顔をあげさせる。
アメリアのばか。どんな顔していいか分からないんだってば。
「そんな顔しないでよ。約束するから。」
「…………」
「あなたが死ぬまで、結婚もしないし、子供も作らない。だからあなたもわたしに誓って、長生きするって。」
見据えた目は微笑んでいても真剣で、でも間違いなくそれは嘘の約束だった。
正義と真実のひとに、あたしは不誠実な約束をねだっている。
「……誓わない。」
アメリアの手を振り払って、勝手に潤み出した目元をぐっと拭った。
「ぜったい早死にしてやる。」
マントをひるがえしテラスの手すりに飛び乗って、呆気に取られた女官に視線を送る。
「あんたんとこのお姫さま、頭おかしいんじゃないの? さっさと結婚して子供でもなんでも産めばって伝えといて」
口を開けて何も返せずにいる顔なじみの女官と、お腹を抱えて笑い出したアメリアを置いて、手すりを蹴って、むかつくほど青い空に向かって。

あんたを縛る、あたしを空に解き放つ。

2006年02月16日(木)
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