あなたとおまえとあんたとあいつ【フィリリナ】

フィリアはリナとヴァルはべらして暮らせたら幸せだろうなでもそこに絶対ゼロスがからかいに来てこいつさえ居なければ……!って思ってるんだろうなぁなんて話にもえてくださった方へ^^





 「すき」
甘い響きの声に、口の中に拡がったのは苦味だった。
「だいすきよ、ゼロス」
にこりと笑って応えた魔族は、同じ微笑みの少女の前ですぅとかき消えた。わずかにだけ、黒い余韻を残して。
「ね?」
リナさんは無邪気な笑顔で私に振り返る。
「こうやって追っ払えばいいのよ。今の見た? 表情ひとつ変えなかったけど、すっごい嫌そうだったでしょ」
物理攻撃も脅しも効かないんだから、メンタル責めるのが一番。なんて、思い通りに行ったことにご機嫌で、リナさんの微笑みはたゆまない。
彼に好きだと告げたときのまま。
「……冗談でも、」
「ん?」
「冗談でもあんなこと言わないでください」
リナさんの笑顔が消える。丸くなった目が、変わらず邪気も無く私を見た。戦いも危険も無い日常の中で、一緒に暮らすようになって分かったこと。凛と立ち、大きく強く見えた少女は、普通の子供だった。
「フィリアが喜ぶかと思ったんだけど」
不自然なメンバーの共同生活に、面白がってからかいに来るゼロス。私の平和を侵害する唯一の存在に、確かに私はいつも高い声を上げて苛立ってみせるけど。
今の心のざわめきに比べれば、その被害がどれほどのものだと言うのか。
そんな恋心みたいな気持ちを子供の彼女に理解できるとは思えなくて私は黙り込む。
リナさんはうつむいて、一瞬後、唇の端をあげて不敵に笑った。
「うそ」
「……え?」
「フィリアが喜ぶなんて思わなかった。そんな顔するだろうなぁって、分かってた」
意味が分からなくて、そんな顔と言われた自分の頬に手を当てる。冷えて、強張っていた。
「ちょっとやきもちやいて欲しかったの」
にやりともう一度笑って、何もかも思い通りに行ったご機嫌顔で身をひるがえし走り出した。おやつまだかよーなんて、ドアから顔を出してきたヴァルのところまで走りついて、私を振り返る。
「フィリアー、おやつの時間ー」
子供2人抱えて、私の心労は絶えない。
これも充分な精神攻撃だわ。ゼロスに同情するわけじゃないけど、彼の苦しみも少しだけ分かる気がした。

2006年02月14日(火)
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