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■ 憧れの人と弟の扱い方【シルリナ】
拍手お礼小話が意外と好評だったので、反転シルリナを。 ですがあれとは関係無く、原作で「あたしが男だったら一発で惚れる」と言ったリナに男の子になって一発で惚れてもらいました^^ なので原作3巻頃。
written by みなみ
時は夕食時、忙しくキッチンを行き来するシルフィールの背中を眺めながら、リナは椅子の背もたれを抱いて座っている。 頼まれた足りない食材を買って戻って来たら、ガウリイとゼルガディスは薪を集めに出て行ったところだった。持て余してる暇のさなか、リナは前振りなく疑問を口にする。 「あんたさ、ほんとにガウリイのこと好きなの?」 「ええ、もちろん好きですよ」 さり気なさの中で意を決していたリナには面白くないくらいの即答だった。 振り返りもしない背中に食い下がる。 「それって単なる憧れじゃない? もしくは助けてもらった恩とかさ」 「そうだとしても好意に変わりは無いじゃないですか。それに、なんでリナさんがそんなことを気にするんですか?」 エプロンで手を拭きながら、シルフィールが今更振り返ってリナを見た。真っ直ぐな眼差しにリナがたじろぐ。 「べ、別に。ただちょっと気になったから」 眼を逸らしながら、あとひとつ、ひとつだけとリナが勇気を奮い立たせた。シルフィールは不思議がって、そんなリナを見る。 「他の男はダメなの? 例えば……ゼルとかおれとか」 一息で言い切ったあとで、いきなりリナは後悔の念に駆られた。 (うあーっ?! なに言ってんだおれ?!) しかしシルフィールはきょとんと首を傾げながら、リナが座った椅子の脇を通り過ぎテーブルの上に置かれた野菜を掴んでまた取って返す。その動きには動揺の色ひとつ無い。 「ゼルガディスさんですか? そうですねぇ、根は悪いひとじゃないと思いますけど、それだけですね。恋愛対象と言う意味で考えたことはありません。」 そっちに食いつくのかよ。しかも肝心な部分はスルーだ。 背もたれに顎を置いて、もはや諦めの色濃いリナはダメ元で聞いてみた。 「で、その、もうひとりは、」 「もうひとり?」 軽快に包丁の音を立てるシルフィールは、ぞんざいでこそ無いが、子供の話に付き合う大人の素っ気無さめいたものがある。 「お、」 おれは?、とは言えない。 リナは溜息ついて腕に顔を埋めたあとで、振り切るように立ち上がった。 袖を捲くりながらシルフィールの隣に並ぶ。 「……手伝うよ」 「リナさんが、ですか?」 「こう見えても故郷で姉ちゃんに仕込まれたから、けっこう上手いよ」 ぶっきらぼうに言い放つリナを微笑んで見守って、シルフィールは頭を撫でたいのを一生懸命我慢した。 「お姉さんの教え方がよかったんですね。安心して見てられます。」 「……どうも」 リズム感のいい包丁さばきをとなりで聞いて、それとは対照的に不規則に鳴るリナの心音には、勿論彼女は気付かない。 ……本当にそうだろうか?
食後、リナはガウリイを呼び出して満月の明かりの下でひたとその目を見据えていた。 どうしたんだ?と呑気に微笑むガウリイは、リナが纏う気配には気がついていない。 「ガウリイ。あんたのことはいい相棒だと思ってるし、今までそばに居てくれてどれだけ嬉しかったか、言葉にできないくらいだよ。」 「どうしたんだいきなり。おまえさんらしくもない。まるで遺ご、」 「だから、」 リナの赤い双眸がぎらりと光る。 「おれのために死んでくれ」 「……もしかして、遺言残しとくべきはオレの方なのか?」 その後ガウリイがどうなったのかを知る者は無く、窓から頬杖ついてそれを眺めていたシルフィールの微笑みも、誰も知らない。
2006年02月12日(日)
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