退屈の代償【ゼルリナ】

 「これは、また派手にやったもんだ」
呆れを含んだ声音を背中で聞いて、リナは微かに肩を震わせた。
「ゼル・・・・」
「退屈なのか?」
幹を抉られた木や、舞い落ちた葉一枚もないさっぱりした地面に視線を這わせながらゼルガディスが問う。
リナは困ったように笑って少し顔を伏せた。
「時々、なにもかも壊してしまいたくなるの」
幼い唇から洩れる、狂気じみた衝動。
高みに登りつめたものが、見ると言うその狂気。

あれほどの、瞬く光の洪水の中心を見たのだ。
ゆっくりと移ろいゆく季節ごときが、彼女を満たせるはずもない。

今はただ、常人(つねびと)には理解の出来ない境地でひとり
愚かな夢に身を焦がすことでしか、自分を保てない。
溢れ出る欲求は、解放されるべき窓を求めて、狭い部屋で荒れ狂っている。
「壊したいなら、壊せばいい」
俯いたリナに触れもせず、定められた場所のようにその場にじっと留まりながら、彼は言った。
「あんたにはその権利がある。あんたは何度も世界を救ったんだからな」











「代価を請求すればいい。世界に」


2006年02月09日(木)
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