まぁだだよ。【ガウリナ】

すっごいゆっるい逃げリナ追いガウ。
ゼルリナサイド。

written by みなみ




 アウトドアな仲間2人が街に買出しに出掛けたのは、インドアな2人が魔道書に夢中になって部屋から出ようとしなかったからだ。
自分の分担を読み終えたリナは、ゼルガディスの肩に顎を乗せてまだかまだかと彼を急かした。腹辺りに腕を回してべったり張り付くと、さすがにゼルガディスの集中力も切れてくる。
「おまえ、そういうことは旦那にしろよ」
「あんただからできるんじゃない」
「ほぉ、それはつまり多少は意識してるってことか?」
「あんたを? ガウリイを?」
「とぼけやがって」
薄い笑みに共犯者めいた笑いを返す。
すっかり集中の途切れてしまったゼルガディスは伸びをして、猫の子を引き剥がすように無造作に、リナの腕を引っ張った。リナは気にするでもなくゼルガディスから離れ、代わりに背を向けてもたれかかる。同じ力で背を預けたゼルガディスと2人、ベッドの上であくびなんてしたりして。まるで屋根の上の野良猫二匹。誰にも飼われたくないみたいな顔をしていた。
「あとちょっと、あとちょっとだけだから。」
笑いを含んだような、切羽詰ったような穏やかな、不思議な声でリナは言った。
ゼルガディスはそんな思春期の女の子の機微を汲む気はなくて、ただこの時間が気持ちよくて、それだけでリナと同じ気持ちになった。もう少しだけ、このまま。
「まぁ、甘やかす方が悪いさ」
思わずうたた寝しそうな穏やかな午後、どたどたと元気な足音がふたつ。
部屋の前で立ち止まり、焼きたてのパンの匂いをさせながらノックをひとつ。
「おーい、開けるぞー?」
部屋の中、2人は声をひそめて笑った。
「リナー?」
返らない答えにのんびりとした声がまた呼びかけて、リナは微笑みながら、ゆっくり目を閉じる。


――まぁだだよ。


2006年01月31日(火)
BACK NEXT HOME INDEX WEB CLAP MAIL