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■ 完全なるハッピーエンド【ゼロリナアメ】
原作アメリアはアニメより善悪のボーダーがはっきりしてるので、ゼロスのこと嫌いですよね。同理由で過去かなりの犯罪を犯してきてるゼルも、仲間としては好きだけど、どうかと思う部分もある。原作姫はリナよりシビアでドライだと思います。
written by みなみ
大きな夜の闇の中に隠れるようにして、2人は口付けを交わした。秘め事らしく言葉は無くて、ただ小さな微笑みだけが、それを愛だと裏付ける。
「……リナ」 完全なる静寂の中、異質の声は大きく響きリナの体を震わせた。 「アメリア」 「アメリアさん」 2人は動揺を隠しとおせると思ってる声で、少しでも夜に紛れようと小さくわたしを呼んだ。今更何を繕っても、わたしは止められないのに。 「リナ、あなた、」 「違うわ」 リナは怖れを振り切るように鋭く遮った。 「魔族と、」 「違います」 もうひとつの声も、続く言葉を許さなかった。 けれどわたしは彼らほどやさしくなくて、健気な想いを踏みにじる。 「恋をしているのね」 はっきりと言葉にすれば、否定の言葉は返ってこなかった。次に違うと言えば嘘になるからだ。 「……なに言ってるのよ、アメリア」 リナは弱々しく笑った。結末は誰の目にももう見えていた。 加速度的に速まる夜は夜明けに向かってひた走る。 「あたしは、」 「リナ、お願い、それだけはやめて」 わたしだって哀しくて泣きそうだったけれど、リナほど悲痛な顔はできない。 きっとこの夜の中、わたしだけがハッピーエンドを迎えることを確信していたから。 「ガウリイさんでもいい、ちょっと嫌だけど、ゼルガディスさんでもいい。他のどんなひとでもいい。人で在るなら。わたしはあなたの幸せを本当に願っている。でも、」 魔族だけは許せない。彼らは完全な悪だ。 「馬鹿ね、アメリア。このあたしが魔族となんて、」 ほとんど泣きそうなリナの脇、魔族が一歩後ずさる。 「笑わせてくれますね、アメリアさん。この僕が人間と?」 「そんなことあるわけないじゃない」 「そうですよ。僕たち魔族は滅びを望むもの」 「あたしたち人間は生を望むもの」 「僕は、」 「あたしは、」 「リナさんのことなんて、」 「ゼロスのことなんか、」 仮面でしかない魔族の表情は動かなかった。リナの固く狭まった眉の下の目は揺れていた。すべての言葉は裏腹だ。 だけど言葉にするまでもない、わたしは2人に愛を見た。
誠実な魔族は嘘をつけない。 誠実な人間も、嘘をつけない。
わたしは自分の弱さを、リナのやさしさを、彼らの想いを、リナのわたしへの想いを盾に、くるべき言葉を待っている。さあ今すぐ言って。わたしの目を見て叫んで。
言葉に詰まった2人は永遠と思われるほどの時間黙りあって、長い長いためらいのあとに 最後の一言を口にした。
「さよなら、ゼロス。もう会わないわ」 「ええ、さようなら、リナさん。もう会わないことを祈って」
木々の隙間から差し込む光に溶かされたように、闇の者は夜が落としたわずかな影の中へ消えていった。 わたしは泣き崩れたリナを抱いて、明けはじめた空の下で微笑む。
愛に嘘を重ねるよりも、永遠に真実を誓うため、彼らは別れを選んだ。 誠実で潔く、健気でぎりぎりだった恋の背中を押した。わたしは悪?いいえ違う。
これが物語のハッピーエンド。
ねぇ、そうでしょう?
2006年01月25日(水)
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