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■ ピュアファントム【ゼロリナアメ】
死にネタです。苦手な方はご注意ください。 なんか随分昔に書いた話なので自分的に色々もごもごしますw
written by みなみ
大切だった 何よりも だから殺してしまった
還りつく場所は 誰もみな混沌
絶対 唯一 そこでなら 一緒になれると思っていたのです
僕がリナさんを殺してからは大変だった。 血に染まったあの日の彼女を思い出す暇もないくらい、本当に多くの者たちが、僕のところへきた。 そしてそれらの生き物はみな一様に、何かを泣き喚きながら、心地良い殺気を振り撒いているのだ。 彼女を殺した同じ手で、それらを殺す気にはなれなかった僕は、ただ笑って姿を消した。 憎まれ追われる身と言うのは良いものだ、と僕は思う。 食事に不自由がなくなるし、本当に居心地が良い。 人間で言うところでは、「愛されている」のと同じ感覚だろうか。 あの人が、くれなかった感情だ。今際の際まで笑っていた。不快な感情をばら撒いて。
ある日ふと、来るべきはずの人間がひとり足りてないことに気付く。 人も竜も立ち入らない深い場所で、退屈を持て余していた僕はそのことに興味を持った。 「真っ先に僕を滅ぼそうとするはずなんですけどね」 彼女が生きてるあいだは、その死の一欠けらも赦さないかのように白い光を放っていたあの少女を思い出せば、笑いが漏れる。 会いに行ってみるのも面白いかもしれない。
空間を渡り、気分の滅入る白い都市へ向かう。 見つけ出した彼女は、小さくて白い墓に花を添えていた。その墓の中には、あの日僕が、もはや必要なくなって捨てたリナさんの器だったものが入っている。銘のない墓標。 銘の入った墓標はゼフィーリアにある。彼女の遺体をセイルーンに埋めたのは、魔族に墓を暴かれないよう自分が墓守をすると、黒髪のお姫様が言ったかららしい。そんな心配をする必要はないと、それを聞いたとき僕は笑った。木偶を生き返らせても、もはや彼女ではないのだから。 「お久しぶりです、アメリアさん」 旧友に会うような気持ちで、僕は跪く彼女に声をかける。 すると彼女も、まるで懐かしむような笑顔で僕を見た。 「相変わらずですね、ゼロスさん。こんなところを堂々と歩いていたら、いつ背中を刺されても文句は言えませんよ?……もっとも、あなたにはそんなもの痛くもないでしょうけど」 他愛なく言って笑えば、その気配は気分の悪くなるような清浄な空気と、仄暗い狂気を垣間見せた。 「あなたは?あなたはそうしないんですか?」 その空気が、あまりにも不似合いで、またあまりに彼女に相応しかったものだから、僕は少し戸惑っていた。 「わたし?どうしてわたしが?わたしはあなたを憎んでなどいないのに」
来るべきはずの人間が、ひとり足りていない。 彼女の死を悼み、僕を憎むべきはずの人が。
「巫女だから?それとも皇女だからですか?僕を憎まないのは」 彼女の笑顔は、今でもリナさんの隣りにあったあの日のままで。 この静かな狂気は、もうずっと前から彼女の中で飼われていたものなのだと知る。 「わたしがわたしだから、ですよ」 この人に会って、僕は笑おうと思っていたのに。 無様に彼女の死体に縋りつくこの人を、笑おうと思っていたのに。 「この人はやっと、誰にも傷付けられることのない、安息を手に入れた」 慈しむその手は、今でも変わらず彼女に伸ばされていて。 愚かだと笑うはずの僕は、こうしてここで立ち尽くしている。 「死は、あなたにも侵すことのできない聖域よ」 嘲るはずの僕が、どうしてこんなに道化のように。
「あなたには祈れない。この人を殺したのはあなただから。 これはわたしにしか出来ないこと。だからわたしは嬉しいの」
二度と会えないことが、哀しいなんて知らなかった。 祈り方も知らずに、未来永劫、途方に暮れる。
無邪気に愛され 人を狂わせ 微笑みだけを残した少女
無邪気に慈しみ 残酷に奪い 閉じ込めたお姫さま
無邪気に愛し 自分の手で それを失ってしまった魔族
ピュアファントムは だれだった?
2006年01月16日(月)
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