|
|
■■■
■■
■ 空に浮かぶ森【11】
まず何よりも、安心した。気持ちがリセットされるような、安心感だった。 「ヴィーナス!」 笑顔を輝かせて駆け寄るセレニティを、ヴィーナスが身を屈め抱きとめる。 「プリンセス……心配しましたよ」 「うん、ごめんね。本当にごめんなさい」 抱きしめた感覚や、声の高さ、少しのイントネーションの違い。――ああ、間違いない。この子があたしのプリンセス。 「良かったね……えっと、」 嬉しそうにしているセレニティに、側にいたうさぎも嬉しそうに声をかける。 「セレニティよ。私、セレニティって言うの。良かったら、セレナって呼んで」 ヴィーナスの腕の中で振り返りながら、名前を呼ぶのを躊躇っていたうさぎに言った。うさぎは一瞬困ったけれど、気持ちを切り替えて微笑んだ。“セレニティ”は、自分にとっての罪悪感の象徴のような存在だけど、彼女自身からは、どうしても罪悪を感じられない。 「うん。あたしはうさぎだよ。よろしくね」 「プリンセス。お立場をご自覚ください。貴女も、あまり気安く近寄らないで」 微笑み合う二人の間を阻むように、マーズが立ちはだかってうさぎを睨んだ。 「私達のプリンセスは見つかった。連れてきてくれたあなたに感謝を示さないわけではないけれど、これで、貴女の処分を早急に決める必要が出てきたわ」 「マーズ、常々貴女が口走る“礼”とやらはどうしたの?」 マーキュリーが非難した。 「“礼煩わしければ則ち乱る”」 「……下手な屁理屈ね」 「ちょ、ちょっと待っ……!」 自分に起因することで険悪になる2人を止めようと、うさぎが慌てて声をかけた時だった。 騒々しい声と足音が駆け込んでくる。 「プリンセス!」 最初に飛び込んできたのは、長く真っ直ぐな黒髪の女性。セレニティの姿を認め、安心したように足を止めた。その後に続いて飛び込んできた似たような黒髪の少女と、対照的な金髪の少女も、呆気に取られたようなセレニティの顔を見て一息つく。 「良かったプリンセ……って、うさぎちゃん!?」 セレニティの無事な姿にホッとしたのち、美奈子がすぐ隣に立っていたうさぎにようやく気付いた。感動的な再会には程遠いなあと思いながら、うさぎが苦笑って頭をかく。 「ども」 「『ども』、じゃないよ、うさぎちゃん! ……心配、したんだからね」 少し泣きそうに、美奈子が笑う。それを見て、うさぎもようやく安堵感に包まれる。そして感じる。やっぱり、“あたし”の“仲間”はこっちだ。 「あんた、はぐれるのの天才ね」 張り詰めたものがやっと解けていくような表情を皮肉げな口調に隠すレイを見て、心配かけた事を自覚して、うさぎは少し胸を痛めて、それからそれら全てを払拭するような笑顔を見せた。 「あたしだって、心配したんだから」
2003年01月14日(火)
|
|
|