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■ 猫になりたい【2】
情事の真っ最中急におしゃべりになるのは、ロビンの悪い癖。 言い訳駆け引きが得意な私が、そのときばかりは熱に浮かされ口走ると知っているから。 「王女様とも寝たの?このベッドで。」 ほら、こんなことを指を突き立てたまま微笑み混じりで聞いてくる。 「……はっ、……さぁね。」 「ふふ、イエスに聞こえる」 「……あんたたちは、そういう決め付けなところが似てる」 「そうなの?」 確かに話を聞かないところのある子だったなんて思い返してる。だからさ、あんたもそうだって言ってるの。 「……ん、あ、あぁ……!」 そうこうしているうちに限界で、今夜もまんまといかされる。 次の日がだるいとか言っていきたがらない私を、そそのかす為の冗談。いつものそれのバリエーションだとばかり思っていたら。 「それで、彼女、上手いの?」 なんて、ぐったり枕に沈んでる私に話の続きを振って来た。 「閨房術は王族のたしなみだものね」 「……だから、いつ私がビビと寝たって?」 「寝てないとも言わなかったわね。違うなら、そう言ったら?」 試すような声色に、顔をあげることも答えを返すことも躊躇った。本気で疑ってるのとは違う。冗談の延長で、退屈しのぎで、欲情の抑制。ありていに言えば、物足りなかったんだろう。 仕方なく私は顔をあげる。 「あんたより上手いひとなんて居なかったよ」 すれすれで的外れな話に切り替えて、気だるい体をロビンにすり寄せ甘えてみせた。背中に回される長い腕、イエスオアノーもエクスキューズもなしの私を笑って許す。 やっぱり似てるのかな。似ても似つかないとも思うんだけど。 「もっかいしよ」 体を持ち上げるのも億劫なのに、ご機嫌取り。腕をついてロビンにまたがって、唇の端にキスをした。 「誘ってるの?珍しい。聞いちゃいけないことでも聞いたのかしら」 「この状況で昔の女がどうとか、くだらない話はしないでよ。するの、しないの?」 冗談を続けるロビンに、少しだけ怒った顔を作って畳み掛けた。脈打つ首の動脈に噛み付いて、鎖骨をなぞるように舐めて、荒っぽく誘う。 冷めかけてもいない肌の奥の熱が沸くようにせりあがってくるのを感じながら、明日のことはどうでもいい、今夜とことん抱かれたいと思った。 まだぬるぬると滑らかに動くロビンの指が、強張る腹筋を丁寧に撫で下ろすたびよがる。 あいしてるとかすきだとか、きもちいいとかもっとだなんて、どんどん口走る。ぼろぼろこぼしてロビンにしがみつく。 ぜんぶ、誤魔化すためにしたことなのか、それとも断ち切るためにしたことなのか、自分でも分からなくなった。 ビビと恋をした。抱き合った。ロビンにそれを知って欲しくなかった。冗談の駆け引きでも、なかったとは言えなかった。 ビビと築いたものを守りたかったのか、ロビンと築いたものを守りたかったのか。 どっちも大事なんて、言っちゃだめかなぁ。 誰へとも知れない罪悪感を隠すため、私は夜の海に身を投げる。
見下ろす滲んだ視界で、波打つ黒髪。じっと見据える瞳。 ああそういえば、こんな夢を見た。
少しだけ青い空を恋しがりながら、手に入れた黒い海に抱かれて。 このまま眠ってしまいたかった。
アラバスタ編終了後。 まだちょっと忘れられない元カノ。少しだけ気になる姐さん。
2000年02月17日(木)
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