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■ 猫になりたい【1】
ロビナミビビ。泥沼注意報。
written by みなみ
覆いかぶさっていた熱い体が隣にずりずりと落ちてくる。 枕に拡がる海色の髪。ずっと眺めていたそれを惰性で追った。 「ナミさん、ひどい」 「え、なにが?」 いきなりの文句に息を整えながら返せば、子供みたいにふてくされたビビと目が合う。 「集中してない。気持ちよくなかった?」 「そんなことないわよ、気持ちよかった。2回もいったし。」 てゆーかいかされたんだけど。 ……そっか、だからしつこかったんだ。唐突に言い分を理解して素直に反省する。 「ごめん。気持ちよかったけど、集中はしてなかったかも。」 もう一度ごめんと言ったら頭を撫でられた。年下だし、かわいいとも思うんだけど、こういうところは大人だと思う。王族っていうより聖職者みたい。不実を責めずに告解を受ける。 「なにかあったの?」 「んー、昼間のこと考えてた。それ以上は言えない。」 「ミス・オールサンデーのことでしょ?」 「なんで分かったの?」 すばやい切り替えしに目を丸くすれば、返ってくる苦笑い。それを見てこっちもしまったと苦笑う。なんだかなぁ、嘘もはったりも上手くいかない。ビビの視線は真っ直ぐすぎる、なんて言い訳かしら。 「ナミさんの好みっぽいなぁと」 「ほんと?そこまで把握されてるの?てゆーかあんたとは似ても似つかないし」 「だって、別に私は好みじゃないでしょ?」 「卑屈ねー」 「言ってよ。それとも当てましょうか?ナミさん、私の髪の色が好きでしょ」 「うん、好きよ」 「海の色だから。私に抱かれてるとき、海に抱かれてるみたいだって、思ってるでしょ」 「んー」 「イエスでいいのよ。それはそれでいいの。海は大きいから。敵わないって思うから」 「ちょっと、ビビ?」 「でもあのひとは嫌、彼女はとても大きくて強くて確かに私は敵わないけど、でも同じ人間で、同じ女よ」 「ビビ、」 「比べて、しまうわ」 「ごめん、ごめんって。泣かないで」 「あんな女に恋なんてしないで」 「しないわよ。おかしいでしょ、その展開。考えすぎなのよあんたは。」 飛躍した考えに慌てながら、ビビの手をぎゅっと握る。熱を分け合うように指から指へ、安心を渡したくて力をこめた。 「恋なんかじゃないわ」 「あんな女に渡したくない」 「分かったから、ね、もう寝よ」 「私がナミさんだけを想えない分、ナミさんは私だけを想ってよ」 「……うん、想うから」 ひどいのはどっちだ。 さんざん愛を囁いて、こんなに好きにさせといて、結局あんたは国を選ぶ。絶対に私を選ばない。私も多分、あんただけを選び続けることはないけど。 ふたりでどんなに並べても、契約じみた愛の言葉。 やっぱりお互いさまかな。 「空や海を見るたびに、一番最初にあんたを思い出すから」 空にはあんたの、罪と慈悲を潜ませた瞳を思って見つめ返すわ。 海にはその波打つ髪を思ってキスを投げる。 ただ空と海にも必ず訪れる夜、青を塗り替える夜の黒に、密かにあのひとを思い出すことは許してよ。 夜の片隅と言う片隅にあの黒髪と瞳が揺れる幻を見て、風に花の匂いを感じ取る、ふるえる健気なアンテナみたいな心を見逃して。 心臓がたったひとつじゃなければ、一個は間違いなくあんたにあげるわ。 それぐらい想ってるから、少しだけ夢を見せて。
暗い暗い眼差しと一瞬だけ目が合った。低い低い声に名前を呼ばれてみたいと思ったの。
海賊だもの、夢なら見るわ。悪い?
夜の海に抱かれて、朝がくるまで眠り続ける。そんな夢を見てる。
ミス・オールサンデーに一目惚れナミさん。女の勘が働く姫。
2000年02月16日(水)
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