“鉄仮面のデュバル”【麦わら一味】

 「人に歴史あり、ね」
ブルックの言葉を反芻して、もう一度ナミを見た。
知りたい。彼女を彩るすべての歴史を。

いつかは、きっと。




「いいのかよ?」
「仕方無いじゃない」
「かわいげのねぇ女だな」
「言ってもしょうがないことでわめくのが可愛いの? 女の趣味が悪いわね、あんた」
「そういうとこがかわいくねぇって言ってんだよ」
ちっと舌打ちしながらも、ゾロは小気味良さそうに笑った。
珍しくも気遣ったつもりが、ナミは意外にも平然としていて、そして毅然としていた。
「約束は守る、それだけよ」
8年間、結局は果たさせるつもりのない約束を強いた男の仲間を、助けると笑って言った。
それに敬意を示さずには居られない。
「約束、か。てめぇのそういうところは尊敬してるよ。ビビんときも、“約束”だって言って、医者もいらねぇって無茶言ってたもんな」
くっと喉元で笑う男を、改めて物珍しげに見遣る。
「あんたも、約束くらいは守れる男になりなさいよね。未来の大剣豪さん。この前貸した3万ベリーはどうしたの?」
そう言ってやればいつもの顔で「あん?」と凄んで返す。そうそう、そういう顔しててよ。見慣れないものは変な気分にさせる。
「それに、別にタダで助けるとは言ってないわ。ケイミーにはたこ焼き、ハチには1億ベリー、きっちり請求するつもりだから」
「……やっぱり根に持ってんじゃねぇか」
果たされずに終わった約束も軽口の種。
「おまえはすげぇよ」
ゾロの小さな賞賛の言葉は、ルフィのあげた声に遮られた。

「野郎共!!!戦闘だぁ〜〜!!!」

海を震わせるときの声。
過去に泣いてる暇はない。

目の前の水平線から、目を逸らさないのが海賊。


2000年01月24日(月)
BACK NEXT HOME INDEX WEB CLAP MAIL