読書記録

2022年09月01日(木) 生皮 / 井上 荒野


 あるセクシャルハラスメントの光景 



 動物病院の看護師で、物を書くことが好きな九重咲歩は、小説講座の人気講師・月島光一から才能の萌芽を認められ、教室内で特別扱いされていた。しかし月島による咲歩への執着はエスカレートし、肉体関係を迫るほどにまで歪んでいく--。

7年後、何人もの受講生を作家デビューさせた月島は教え子たちから慕われ、マスコミからも注目を浴びはじめるなか、咲歩はみずからの性被害を告発する決意をする。

なぜセクハラは起きたのか? 家族たちは事件をいかに受け止めるのか? 被害者の傷は癒えることがあるのか? 被害者と加害者、その家族、受講者たち、さらにはメディア、SNSを巻き込みながら、性被害をめぐる当事者たちの生々しい感情と、ハラスメントが醸成される空気を重層的に活写する。


                  朝日新聞出版



父親がきらいになったのはいつ頃だったろう?  いや、その前に母親のことをきらいになったような気がする。笑っていても、喋っていても、物思いにふけっていても、小言を言っているときも、母親じゃなくて彼女の「皮」がそうしているみたいに感じるようになったのはいつからだろう? だから母親とは本音の話は決してできない。自分にとって本当に大事なことは母親に話してはいけない、と思うようになったのは?



単行本の装画が結構ショッキングだけれど、物語の中でセクシャルハラスメントを受けた女性たちは見た目には血を流してはいないのだ。







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