2021年08月27日(金) |
臨床の砦 / 夏川 草介 |
主人公は40代の消化器内科医、敷島寛治。 彼が勤務している長野県の信濃山病院は「コロナ診療の最前線」。 呼吸器の専門医はおらず、専門外の内科医と外科医が集まった混成チームで対応に当たっている。重症患者を搬送できる医療機関は、一か所しかない。
一般診療を継続しながらの診察は熾烈を極める。発熱外来に並ぶ車に防護服を着た看護師がiPadを渡し、医師とオンラインでやり取りする。端末をうまく操作できない人ももちろんいて、病状把握は忍耐の連続だ。感染症病床を六倍に増やし、クラスターが発生した介護施設の高齢者を受け入れ、ぎりぎりの上にぎりぎりの状況が重なっていく。日々必死に理性を保ち、最善を尽くすチーム。彼らの前にもたらされたのは、院内感染が発生したという、無情の事実だった。
今、日本に突きつけられている現実。
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