2021年03月16日(火) |
涙をなくした君に / 藤野 恵美 |
父親の支配下で育ち、やがて両親の離婚という家庭崩壊に至った経験を持つ橙子は、テニスインストラクターの夫や小学一年生の息子に怒りをぶつけそうになり、そのたび父親に自分を重ねてしまう。 父親を嫌いながらも見捨てることができない自分にも苛立つ。橙子が臨床心理士と言う職業を選んだのは、消えないいびつな自分の心を理性で受け止めるためなのだろうか。そして再婚した母親や父と完全に接触を絶った妹の身勝手さに腹が立った。 そんな中、父に肺がんの診断が下され通いの家政婦が看病とさらには看取ってもくれた。 家政婦と再婚した父が亡くなったことでようやく燈子と妹は呪縛から逃れるのだ。
私も自分が一番偉いと思っている父と愚痴ばかりの母とにうんざりしていた。 でもこの小説の場合、理解ある夫とタイミングよく家政婦が登場することで介護からは解放されているのだ。 確かに苦しかっただろうけれど結果良ければすべて良しなのだ。 それにしても燈子の息子小学一年生の蓮くんは可愛いなぁ。
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