読書記録

2020年10月31日(土) 飛族 / 村田 喜代子



 国境に近い離島でたった二人で暮らすイオさん(92歳)とソメ子さん(88歳)。
西の果て、時が止まったような島で、亡き人は鳥に姿を変えて訪れる。
死は決して終わりではないのだ。心地よい海風に身を委ね海鳴りを聞きながら、軽やかに境界を飛び越えてゆく鳥のように、二人の老婆は自由に豊かに生きることの幸せをしみじみと感じている。

イオさんの娘ウミ子さんは自分が暮らす本土にイオさんを連れて帰りたいのだけれど、二人の老婆はこの島でしか生活できないことを知る。

空と海が溶け合って一つになり、ずっと島で暮らした人の命が還ってゆく場所。

二人が天を仰いで踊る鳥踊りの描写がなんともユーモラスで、そこには二人の世界があるのだ。

実際には養生島という島はないようだが、津島列島とその周辺の島々に暮らす人々の状況も興味深く読んだ。



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