2020年06月28日(日) |
狂歌 / 佐伯 琴子 |
福岡のフリーペーパーの編集長、寺嶋きり葉のもとに、1通の手紙が届く。差出人は広告のクライアントである料亭の社長、清倉龍臣。貼られた黄金色の百人一首の切手には、旅先で一夜をともにした(でも最後のほうでそういうことはなかった)男女の恋の歌がつづられていた。
龍臣は歳も近く同郷だが、彼女だけが知る2人の間の秘密を想い、きり葉の心は激しく揺れる。1年後、龍臣が仮想通貨の交換会社をつくり、きり葉はフリーペーパーが廃刊に追い込まれていたので社長を引き受ける。せつない恋情を胸に秘め、きり葉は順調に大金を稼げたものの、ビジネスは危険な方向へ流されていく。だがそれも最初から宇賀神という若い男の仕組んだ世界で、龍臣も自身の父への復讐が狙いだった。 しかも、しかも……龍臣ときり葉は異母兄妹。。。
難波江の 葦のかりねの ひとよゆえ みをつくしてや 恋いわたるべき
皇嘉門院別当
(難波江の、葦を刈ったあとの根の一節のように、ほんの短い一夜でした。 しかしその短さゆえに未練が残り、想いが募り、 わたしは生涯をかけて、あなたに恋い焦がれてゆくのでしょうか。)
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