2020年05月16日(土) |
天国旅行 / 三浦 しおん |
『死』をテーマにした短編集。
〇森の奥 富山明夫は早期退職をほのめかされ、同居する妻の両親の介護に追われ、長男も交通事故を起こしてしまい、妻に『あなたが死んだら保険金がはいるのに』といわれ、富士山樹海にやってきた。
〇遺言 58回目のあの時死んでいればよかった、という妻の言葉にうんざりしていた。 あの時というのはいったいいつを指すのか、君への思いを言葉にするつもりでパソコンに残しておこうと思う。
〇初盆の客 祖母の初盆に訪れた客は石津緑夫と名乗った。 戦前、乳飲み子を残して祖母は遠縁の祖父のところに嫁いできた。
〇君は夜 ひとはみな、夜にはべつの生を生きるのだと思っていた。 眠りの世界で、昼間とはちがう名前と顔を持っているのだと。 そして理紗の夢の世界は前世の私。
〇炎 通学バスに乗る憬れていた先輩が夏休みの最後の日、校庭で焼身自殺した。 先輩と付き合っていたという同級生の初音と先輩の自殺の真相を調べることになった。
〇星くずドライブ まったく迂闊ではあるが、僕は香那が死んでしまったことにしばらく気づかなかった。 ひき逃げされて死んでいたのに、香那は僕のところにやってきて僕にしか見えない姿でいる。
〇SINK 鉄を切ったり曲げたり叩いたりして、既製品では飽きたらぬ施主からの依頼で門扉や街灯や窓飾りを作るのが悦也のしごと。 悦也は一家心中の生き残りだった。
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